[さ〜ん] 君と僕との作戦会議
あくる朝も、夕原さんは淡々と登校した。
今日こそは何が何でも事態を好転させなくては。
そうしなければ、あの
どうにかしてこの現状を打破して、何がなんでも元の身体に戻るんだ。
僕は決意も新たに、彼女と一緒に一日の授業を乗り切るのだった。
二時限目、担当教師が出張の為に自習となった。
私語でざわつく教室の中、夕原さんは静かに世界史の問題集を解き始める。
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問1)明の洪武帝が導入した土地台帳を何というか。 ( 魚鱗図冊)
問2)ティムール朝の都は何処か。 (サマルカンド)
問3)紀元前500年、アケメネス朝に対するイオニア植民市の反乱にアテネが支援したことから始まった戦いは何か。 (ペルシア戦争)
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単元混ざりの、ランダムな一問一答形式だ。
何となく一緒になって問題を解いてみる。
まあまあ分るな。
歴史は割と好きなのだ。
地図や年表は見ていて楽しいし、資料集なんかも面白い。
しかし、夕原さんはちょっと苦手ならしいのだ。
半分くらいの正答率。
『────ああ、それはローマ帝国の。
えっと、初代の皇帝はたしかアウグストゥス。────』
思わず興奮して強く念じてしまっていた。
ん!?
ピクリと反応する夕原さん。
《えっ何? 誰? ……
いきなり彼女の思考が伝わってくる。
まるで
『────アウグストゥスの次は、ティベリウスだよ?』
《ええと、それじゃあローマの五賢帝は?》
『それは、ネルウァ、トラヤヌス、ハドリアヌス、アントニヌス・ピウス、マルクス・アウレリウスの5人かな。他の人たちに比べて
《……
『いやいや、そんなことない。僕、春田だよ。幻聴じゃないから落ち着いて?』
《えええっ!?》
彼女は驚きのあまり、ガタリと
一瞬だけ教室中の視線を集めたが、はっとしたようにごめんなさいと座り直すことによって事なきを得たようだ。
『ごめんね……
《ホントにホントなの!? これ、変な夢じゃないでしょうね?》
『まあね。夢だったらよかったんだけどさ……どうしたら元に戻れるのか絶賛考え中なんだ。とにかく君と会話ができるって事がわかって嬉しいよ』
そう、
これは大進歩。
こうして僕たちは、残りの自習時間を今後の作戦会議に費やすことになったのだ。
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