第3話 モノローグ
いつまでこの時間を続けられるんだろう?
何をしていても、その不安がいつも頭の片隅にあった。
この作戦は綱渡り。そんなことは最初からわかっていた。どこかで限界がくることも。
それでも、諦めきれなかった。だから、仕方ない。
「……あっ、ごめん」
傍で聞こえた鳴き声に、私は現実に意識を引き戻す。それから一匹の魚を袋から取り出して、目の前の相棒に差し出した。
ぱくり。彼女は一口でそれを平らげてしまった。
「いつも少なくてごめんね」
一度に与えられる魚は以前よりも少ない。なんとか増やそうと頑張っているものの、毎週こっそり仕入れている薬の費用もあって、私の財布は既に悲鳴を上げていた。
不意に霞んだ視界に、私は目をこする。連日連夜の泊まり込みは思いのほか精神にくる。最近知った驚きの事実だ。
――そろそろ限界かな。
もう少しやれると思っていた。でも、思っていたよりも状況は厳しく、そして私は柔だった。その事実がただただ悔しい。
相棒がじっとこちらを見つめている。その頭を撫でながら、中途半端になってしまうことを心の中で詫びた。
近いうち、誰かが気づく。そして私は、現実を突きつけられる。
だったらいっそ、それは劇的であってほしい。一番私に深い傷ができるように。二度と夢を見ようと思わないように。
その時、背後で扉の開く音がした。
――やっと来た。
近づいてくる足音を耳にしながら、私は立ち上がる。
これで幕切れ。そう思うと悔しいし、寂しい。けれど、心のどこかでほっと息をつく自分もいた。
だらしない。そんなことを思いつつ、私は後ろを振り返った。
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