第5話

バカだのチョンだの社員とバイトが揶揄し合って、実際の腹ん中は最悪。「ごめんなさい」「ありがとう」が普通に言えない程。こいつらの人生は、どこか追い込まれてる。怒号を職場に響かせる。途方もなく無関心でいる自分に嫌悪感を覚える。見て見ぬフリは、時として自分を守ることは出来るけど、人間であることを放棄してるみたいで嫌。で、そいつはその日で辞めた。こういうのはしょっちゅう起こるわけではないが、たまにあるんだ。こういう惨劇。ケンカとは主張を守る為のもの。他人を傷付けるものではない。心から感謝することが出来れば人は道を間違えない。バイトを一人の人格を持った人間として扱わないと、こんな馬鹿げた結果になるというこれは一つの例だ。その惨劇をおっぱじめたバイト君を大々的に肯定しているのではない。そいつにも当然ながら問題有だ。こういう誰でも出来るような簡単で単純な仕事とはいえ、大人としての振る舞いを俺らには求められている。それをを忘れてはならない。いやあ、でもまあ、久しぶりに嫌なもん見ちまった。思い上がったガキと俺はお前ら若造より何でも知ってるぞ。それって当然だろって顔してるオッサン。どっちかって言うと、まだ俺はガキの方がまだ許せるかな。基本、両方共、決して褒められた行いじゃないけど、オッサンの自信過剰は性質が悪い。見ていて痛々しい。基本的に人生の疲労は実年齢とは関係ないと思うし。見た目オッサン。心はクソガキ。で最低な奴。ダメ人間ロードを爆走中。理想は、年を重ねる度に悪を心から追い出し、善性を自分の中に見言い出し、これを自分の心の最前列に押し出していられるようになること。あの人、丸くなったね。とか角が取れたね。とかって要はそういうことでしょ。基本、実力主義で適材適所。そしてアメとムチ。部下には、小さい失敗は極力咎めないように接する。部下が仕事しやすい環境を作ってやる。これも優れた上司の資質の一つだ。だが残念ながらこの職場。理想の上司は皆無。忠実な心を持って控え目な態度でこっちは接するのに、どちらかと言えば、理想とは違う上司だから、これは大変。相手のペースに巻き込まれないように上手くやらないと。また己の信念、誠実さを持って、波風が立たぬように接するように努力する。人海戦術も上手く機能しない職場だし。こんなんでは、閑暇を利用して読書に励む方がよっぽど利口だ。だが、人を見下すようなやり方は絶対称賛してはいけないと思う。それにこういう所、仕事そのものではなく、ここがターミナル駅だという事実。つまりここは夢の執着点でもなければ、心から誇れますって言える所でもない。人としてのプライドは持っているが、ここでのプライドは中々持てないでいる。皆、次の道へのつなぎとか、何度でも言うが、駅で言えばターミナル。自分が行きたい方面の電車が来るまでプラットホームで腕組みしてます。みたいな。ってそんな感じだから、たぶん色んな事件が起こってもしょうがない。皆、心のどこかで同じようなことを思っているのだろう。人の琴線なんて目に見えないし、触れたつもりもないのに、俺も結構前に嫌味なオッサンに仕事中、いきなり胸ぐら摑まれたことがあった。このオッサン、自分は棚に上げといて他人に対しては文句を言う。あんたこそ、鏡で自分に問いかけて見なさい。俺はこれで正しいのかと。そんなに親しくない他人の心の深淵を覗く趣味はないが、たまに変な大人がいる。俺だってまだまだ未熟な人間ですけど、他人に当たったりはしない。ちなみに仏教では輪廻する世界から輪廻しない世界へ辿り着くことを“解脱”と言うそうだ。要は学ぶべきは全て学んだ。後はあの世でゆっくり温泉にでも入ってまったりしよう。くらいにでも思えばいいっすかね。仏教を学んでる方。どうっすか?こういう解釈。人はただ、年を取れば成熟する。なんていう正解はない。いい年の取り方をしていかなくては成熟は訪れない。時が子供を大人にしてくれるのではない。己で真に自覚するまで人は、子供から大人の階段を上って行くのだ。だから、いつまで立ってもガキはガキ。大事な理性や善性が育たないままで大人になってしまった人は、まんま不幸と言うべきかもしれない。だが人生は死ぬまで勉強だから、だいぶ大人になってからでも、理性を育てられると気付いても遅くはないと思う。まだチャンスは残っているんだ。最後の最後まで。顔はオッサン、オバサンでも問題はない。輪廻は決して閉じた螺旋ではないと思うから、絶対、出口がどこかにある筈だ。それを必死に探す。それこそが生きるってことの真髄でしょう。例えば老後とは何か?誰でも年を重ねて行けば誰もがぶち当たる壁。俺はもう終わったのか、もう俺はこの世に必要とされてないのだろうか?色々な考えが頭を過ぎるだろう。めいいっぱい、精いっぱい人生を突っ走って来た人間なら、一種の寂しさを覚えるかもしれない。もしかしたら、本当の満足感で心から満ち足りた思いに駆られるかもしれない。本当はそんな人こそ、この世で一番の幸せ者と言えるのだろうか。心のどこかで、人は生まれ変わると本気で思っている俺からしてみれば、次の人生、もしくは来世。って言葉自体は、まあどうでもいいんだけど。ズバリ老後とは、次のステージへの予習期間。それくらいの解釈でいいのではないだろうか?どのくらい予習期間が残ってるかわからないっすけど“人は学ぶ意志さえあれば、いつでも、いくつになっても、またどこでだって学ぶことが出来るんだ”それを頭の片隅にでも入れながら、俺は人生を歩んで行きたいと思います。理性的でいる日常が良心を生み、人間が本来持っている向上心を生む。感情だけで生きるのは下手な生き方。でも人生を深く生きようとする心が働くと不安が付いて回るんだ。こんな世知辛いご時勢だからフリーターを選らんだという逃げの考えも俺の中にあると、自分でも自覚している。今日をどう生きるか、明日をどう生きるのかは、そいつの勝手。生きる意味をとことん考えたければ、そうすればいい。生きる意味。そんなのねえ。そんなの知らない。そういう奴もいて当然。でもやっぱ、俺は考えるかな。考えて考えて、自分で解釈して生きる方が楽だという節が胸ん中にあるから。意味なんて、極端に言えば毎日違ったっていいし。更新するものだとそもそも思ってるし。ただ、他人には迷惑かけないようにはする。だって俺と、君は世界の見え方が違うから。こんなどうしようもない俺だって将来のことを考える時があるんだ。誰かと結婚でもして、子でも授かるとする。親になる為に資格がいるのなら、今の俺なんか、間違いなくその試験にパスしない。必死で勉強してからその試験を受けることにします。根無し草の社会。常軌を逸した軌道を取る。理想の社会?全ての人間が紳士、淑女であり、そいつらが創った社会があるなら、それが一つの理想でしょうか?で俺は将来はそういう所に住みたい。世の中に溢れ出る程のアイテム。それだってどれでもいいわけじゃない。仕事だってそれと同じ。心の根っこがブレてる人も魅力ゼロではない。それはマジで思ってる。だって過去は過去だから。誰にでも未来はあるから。で思うところは。俺、ホントにここにいていいのかなって。俺の思念が宙を舞う。瞳も「上下左右」を行ったり来たり。断崖絶壁に立ってるわけじゃないけど、何かとてつもない不安が俺を襲うんだ。

 彼女の家に行く前にガソリンスタンドで、車も持ってないのにサッカーくじをやる。これも一種のルーティーン。こういう生活をしていると1週間のルーティーンが大体決まって来る。今日は金曜日でくじの締め切りの日だった。大好きなサッカーで運試し。軍資金は、200円と決まっている。懐の寂しい俺は、週一回。200円×4週で800円を月にして使ってる。他にギャンブルは数字を6つ当てる奴ぐらいだ。競馬、競輪、競艇、オートの公営4大ギャンブルはやらない。パチンコもやらない。アニメオタクの友人がやたらと薦めてくる台もあるが、あのジャンジャンバリバリした音と雰囲気がどうも苦手。毎週ここで買うサッカーくじがちょっとした俺のギャンブル心を刺激する。

「兄ちゃん、また買うんかい?」

たまに、トラックのおじさん達が良く話しかけてくるのもご愛嬌。ガソリンスタンドへわざわざサッカーくじを買いに来る若い奴も珍しいからか。それとも俺が話しかけやすい顔してからか。顔見知りの人が、たまに何を賭けた方がいいのか聞いてくる。大金を当てたことのない、アンラッキーボーイにも関わらずだ。まだまだ、サッカーは若者だけのスポーツなのか、年配の人にはそこまで愛されてはなさそうだ。いつもスポーツ新聞で、ケガ人や出場停止の選手をチェックするのだが、今日は、情報として頭に何も入れて来なかったのでヤマカンで勝負をする。時間にして、ものの三分くらいでマークシートに記入し終わり、販売員に渡す。先週も同じ人だった。そして見事にハズレた。今週は違うだろうなと念じつつ、金を払いチケットを受け取り、ガソリンスタンドを出た。

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