第5話

5.


次の日、私は自分の家に帰り、隊服に着替えて戦いの準備をした。お姉ちゃんの首飾りは首につけ、自分の首飾りはピアスに改良し、左耳に穴を開けてつけた。刀は腰にさし、お姉ちゃんの短刀と自分の短刀は懐と後ろの帯の部分にしまった。そして、お姉ちゃんとお揃いのリボンを髪につけ、家を出た。朱里達との集合場所に着くと、刀を構えた。

「やぁ!」

スパンッ

私は刀を振り、集合場所に立てかけてあった看板を真っ二つに切った。すると、目の前の景色が変わり、建物の中の景色になった。辺りを見回すと、奥の方に人影が見えた。ゆっくりと人影に近づくと、そこには朱里と鷹優、それと私達が捕まえて来た暗殺者達がいた。そう、私達の大きな秘密とは、本来ならば処刑すべき暗殺者を処刑せずに、自分達の仲間として剣の教育をしている事だ。この暗殺者達は剣術以外にも薬の調合や医療技術が優れている人が多く、この戦いにおいて大きな戦力だ。昨日、許可を催促して来た子達は、その中の数十人だ。

「よう色。無事にこれたか」

「当たり前だよ。ここで迷ってたらお姉ちゃんのことを助けられないじゃん」

鷹優が笑いながらそう聞いてきたので、少し頰を膨らませながら答えた。

「鷹優様、色様が迷うわけないですよ。色様には音様を助けるという任務がありますから。私達は音様を助ける任務の補佐をするだけです」

一部始終を見ていた同い年の江が私の言葉を肯定してくれた。ついでに江の任務内容も伝えてくれたけど。

「そっか、じゃあ今回の計画で江が私の補佐をしてくれるんだ。よろしく、江」

「お任せを。全力でやらせて頂きます」

私が江に挨拶をすると、江は決まったような挨拶をしてそれ以上余計な雑談は何も言わなかった。

「さて、そろそろ来るかな」

朱里がそう言って立ち上がり、外の様子を見た。私も同じように外を見ると何万の政府軍が押し寄せていた。

「ちょっと朱里、何で政府軍がいるの。この計画は政府にバレないようにやるんじゃないの?」

私は朱里にそう聞いた。何故なら、この計画は極秘に遂行するつもりだったからだ。しかし、朱里は黙ってしまった。その様子を見て、朱里の代わりに鷹優が答えてくれた。

「色には伝えてなかったな。実は、計画の事が政府に漏れたんだ。だから、俺達が来た時には既にこの城は政府軍に包囲されていた」

「は?」

私は鷹優が言った言葉がいまいち理解できず聞き返してしまった。

「だから、計画が政府に漏れたんだ」

鷹優はもう一度言ってくれた。でも意味がわからない。何故政府に漏れた。頭が回らない。

「え、何で漏れたの?」

「それは...、多分この中に内通者がいるんだろう。だからバレたんだと思う」

私の素朴な疑問に鷹優は顔色を変えずに淡々と告げた。

「内通者?でもみんな仲間だよ。いつも協力してきた仲間だよ」

私は絶対に信じない。みんなはとてもいい子達だもん。私達を裏切るような事は絶対にしない。

「警察特別暗殺隊鋼の最強剣士陰那色、姿を表せ」

そんな事を喋っていると、城の外からそう呼ばれた。そう、私は鋼の中で最強剣士なのだ。まあ、今はただの剣士だけど。

「色、城の天守閣の屋上に出よう。今回の計画はお前が主将だ」

鷹優がそう言って屋上に行こうとしていた。

「ちょっと待って。え、この城に屋上何てあるの?」

「ああ、この城は今回の計画の為だけに建てられた城だからな。普通の城とは違う」

いや、屋上があるのも驚きだが、この城が今回の計画の為だけに建てられた城という事にも驚いている。そんな事を話していると、政府軍からの呼び声が大きくなった。私は屋上に出る為に階段を登っていった。屋上に着くと、政府軍の全体が見えた。政府軍の兵士達は私の名前を呼び続けている。私は屋上に行くと、その声に負けないように大きく息を吸い、私は声を張り上げた。

「私が陰那色だ。政府軍、私の姉、陰那音を返してもらう。大人しく返せば命だけは助けると保証する。しかし、抵抗すると言うのなら....お前ら全員斬殺する」

私は表情を冷たくし、政府軍を睨んだ。するとしばし政府軍は静かになったが、思い出したかのように声を上げ、私達を罵る言葉を叫び始めた。

「陰那色。我々はお前らの要求に従うことはない。陰那音は返さない」

政府軍の大将が声を上げ、私達にそう言い放った。どうやら、戦わなければいけないらしい。なるべく戦いたくはなかったがしょうがない。

「そうか。ならこちらとて手加減はしない」

私は短刀を二本握ると、屋上から飛び降りた。体が浮く感じがする。あっという間に政府軍のいる地上に降り立つと、短刀を鞘から抜き、構えをとった。

「陰那山王流二刀流短刀術 激流桜」

そう言って走り出す。もちろん、政府軍の兵士らは刀を振り回したり、矢を放ったりしてくる。しかし、暗殺者相手に戦ってきた私にとってそんな攻撃は無意味に等しい。次々と攻撃を避け、短刀で兵士らの太い血管を切っていく。途中、兵士らが怯んだ隙に少し走るスピードを上げ、政府軍の大将の場所まで一気に進んで行った。敵の陣営にたどり着くと、私がもう近くに居るとは知らない政府軍の大将は呑気に女と酒を飲んでいた。

「くっくっく。陰那色も落ちたの。この人数の軍にはあいつも死ぬだろう。あいつが死ねば、音は俺のもんだ」

その話を聞いて、お姉ちゃんをさらったのはコイツだと確信した。途端に怒りや憎しみが込み上げてきた。私は怒りを必死に抑え、一気に大将のいる本陣に突っ込んだ。

「我、陰那色という。お前には死んでもらう」

そう言うと、私は素早く短刀の構えを変えた。

「陰那山王流二刀流短刀術奥義 流炎音色」

そう言い、大将に突っ込もうとした。でも突っ込めなかった。理由は、私の後ろに居た敵の兵士が私の心臓に刀を突き刺したからだ。しかし、私は倒れない。それどころか、心臓に刺さった刀を抜き、私を刺した兵士を斬殺した。

「な、何故倒れない。心臓に刀が刺さっていたのに」

敵の大将は私が死なない為、とても困惑していた。でも私はそんな事はどうでもいい。

「死ぬ前に答えろ。姉さんはどこだ。答えたら命だけは助けてやる」

私がそう言いながら大将の首に短刀を二本突きつけた。

「.........」

しかし大将は答えない。私はしょうがなく居場所を吐くまで幽閉する為、大将を城の中に連れて行こうと、短刀の鞘を使い気絶させた。

「ぐっ....」

ドサッ

そう言って気絶し、倒れた大将を担ぎ、政府軍の本陣を後にした。

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