第4話

4.


地下の部屋を後にし、三本杉専用の家を出ると家に真っ直ぐ帰った。しかし、いつもはいる鷹優が居なかったので、少し驚いた。まあ、人間だから居ない時もあると考え、家へとゆっくり帰っていた。その時、空気がおかしくなった。何かの術が付近で使われている。しかし今のところ暗殺者情報は無い。何事かと急いで家に帰ると、家の術が破られていた。すぐさまお姉ちゃんの名前を呼びながら家の中に入った。家の中に入った途端、私は自分の目を疑った。家の中が派手に荒されていた。しかも、お姉ちゃんの名前をいくら呼んでも返事が無い。物を掻き分けながら家の奥へと進んでも、お姉ちゃんの独特な気配が一切感じられない。

「お姉ちゃんっ。どこ?いるなら返事して!」

そう呼びかけるも、何も聞こえない。代わりに、居間のちゃぶ台の上に手紙があった。急いで封を開けひらくと、お姉ちゃんからの手紙だった。


色へ


この手紙を読んでいるという事は、私は家に居ないね。でも、私を探そうとしないで。絶対に。私を探そうとすると、多くの危険が色、朱里、鷹優、そしてあの子達にも及んでしまう。色は何もしなくていいの。さようなら。


手紙を読み終わると、私はしばし呆然としてしまった。お姉ちゃんが居なくなった?いや、連れていかれたのか?探すな?どういう事だ。意味がわからない。でも、お姉ちゃんを探すとあの子達や朱里達にも危険が及ぶ?私はもう一度お姉ちゃんからの手紙を読んだ。すると、ある事に気づき、急いで家を飛び出した。目的地は朱里の地下室だ。

「朱里!鷹優!いる?」

「何?色」

「俺もいるぞ」

急いで家に駆け込んで二人を呼ぶと、二人共返事をして出てきてくれた。

「良かった。いた」

私がそう言うと、二人は怪訝そうな表情になった。

「お姉ちゃんが、お姉ちゃんが、政府の人間に連れていかれた」

「え?」

「は?」

驚くのも無理ないだろう。しかし、事実だ。

「二人共、この手紙を読んで」

私がお姉ちゃんからの手紙を二人に見せると、すぐに二人共言葉を失った。

「えっ、どう言う事?」

「俺もさっぱり意味が分からん」

二人はやっと喋った。まだ信じられなさそうで、信じたくなさそうだった。

「見ての通りだよ」

私は家に帰った後の事を全て二人に話した。全てを。その話を聞いた二人はまたまた言葉を失った。

「一体どう言う事だ。何が起こっている」

鷹優が最初に喋り出したが、いつものような静かさがない。必死に冷静になろうとしていた朱里も、勢いよく喋り出した。

「どう言う事よ、色。意味が分からない」

「だから、お姉ちゃんは政府の人間に連れていかれた。お姉ちゃんを探そうとするとあの子達や私達に危険が及ぶ」

しかし、お姉ちゃんからの手紙には続きがあった。それは、お姉ちゃんの特殊な術がかかっており、字が三本杉の首飾りをしている人以外には見えないようになっていた。手紙の続きを読んだ二人は何か考えたようだったが、二人共、同じ言葉を言ってきた。

「「色、今こそあの計画を実行するべきだと思う」」

「私もそう思う。実行しよう。お姉ちゃんもあの子達も守るために」

私が二人の言葉に賛成すると、朱里が棚の奥から一冊の古い本を出してきた。私が何だろうと思っていると、その気持ちを読み取ったかのように教えてくれた。

「これは、三本杉に代々伝わっている反政府計画書だ。この計画は、巧妙かつ完璧に作られている。失敗する事はまずあり得ない。死ななければ、だが」

「反政府計画書?初めて見た」

私がそう言うと、当たり前だと言う顔を二人にされた。

「それが普通だ。この計画を実際に使うのは我々が初めてだ」

鷹優がそう言う言って、書を朱里から貰い、開いて見せてくれた。

「この書のことは当然だが政府には知られていない。だから、この計画は政府軍にとってはこの上ないほど威力があるだろう」

書をじっくりと見ると、確かに巧妙に作られており、完璧な計画が書かれていた。

「しかし、この計画を実行するにはあの子達の力が必要だ。色はあの子達の協力を許可してくるか?」

鷹優がさらにそう言ってきた。でも、正直あの子達を政府のせいで死なせたくない。私達がやっと政府から助けたのに。でも、お姉ちゃんも助けたい。私が許可を出すのに戸惑っていると、がたがたと音がして、小学生くらいの子供から、50代後半くらいの大人が数十人ぞろぞろと入ってきた。

「色様、私達なら大丈夫です。音様を助ける為に、私達を政府軍と戦わせてください。お願いします」

最年長の男がそう言うと、みんな口々にそうだそうだと言い出した。

「でも、みんなを危険な目には合わせたくない」

私がそう言うと、みんな私の周りに集まって来た。

「色様、許可を出してください。私達は色様と音様にたくさん助けられました。今度は私達が助ける番です。そのために、どうか許可を」

そう言ったのは最年少の女の子だった。そうは言われても...と悩んでいると勝手にその子がみんなに許可を得たと言ってしまった。

「みんな色様が許可を出してくれたわ。早く準備をしに行くよ!」

その子がそう言ってしまった為、みんながぞろぞろと準備をしに家の奥に入っていった。こうなると、もう後戻りができない。叱ろうと思って女の子がいた場所を見ると、女の子は既に居なくなっていた。

「色、ありがとう」

鷹優と朱里は全て見ていたのにも関わらず、私にお礼を言って話を進めていってしまった。正直、とても心配だがお姉ちゃんを助ける為だ。そう思い、気持ちを計画の方に切り替えた。いざとなったらあの子達の事は私が守るし。

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