第3話
3.
さあ出発だ。荷造りを終え、家を出ようとすると、お姉ちゃんに止められた。
「待って、色。これ、忘れ物」
と言って、綺麗に磨かれたお姉ちゃんの短刀を渡された。
「え、何でお姉ちゃんの短刀?」
そう聞くと、お姉ちゃんは
「いいから持っていって。この短刀は、何かあった時に色の短刀と二刀流で使うとある事が起こるから」
「ある事?」
しかし、私がそう聞いてもお姉ちゃんはこの話は終わりだと言わんばかりにもう一つ何かを私の首にぶら下げてきた。
「あと、これをつけてって。これは、ヨーロッパのペンダントという首飾りよ。この首飾りは三本杉になった人しか貰えない物よ」
確かに、その首飾りは私も今つけている。これがないと家に入れない術をかけているから、いつも肌身離さず。だから、お姉ちゃんのを私がつけていくとお姉ちゃんが家から出たら入れなくなってしまう。
「えっ、何で?家の中に入れなくなるよ」
「なんでもよ。この首飾りを持ってさえいれば三本杉の称号は消えないもの」
意味がわからない。でも、お姉ちゃんはそれっきり言って家の中に入って行ってしまった。「まあ、深く考え必要は無いか」
そう言って、私は家を出た。
「行ってきまーす!」
家を出て数分南に歩くと、三本杉専用の家がある。そこもあの首飾りが無ければ入れない術がかかっており、家族とて三本杉以外は入る事が出来ない。
「こんにちは」
入り口で鍵穴に首飾りをかざし、家の中に入ると、私はそう言って地下の部屋に直行した。「こんにちは」
地下の部屋の扉を開けると、そこには緋倉がいた。
「おう、色。きたか」
そう言って緋倉は一本の注射器を投げ渡してきた。
「ほい。お目当はこれだろ」
そう言われ、私は注射器を見た。注射器の中には漆黒の液体が入っていた。私は注射器の針を自分の心臓部分に刺し、漆黒の液体を体の中に注入した。
「くっ...、さすが朱里。今回のは結構強力だね」
漆黒の液体を体の中に全て注入すると、体の色が黒くなり、激痛に襲われる。だが、いつもはもう慣れた為、数秒で落ち着く。しかし今回のはいつも以上に強力で、あまりすぐには痛みが引いていかない。数分間激痛が体を襲い、やっと痛みが引いてきたと思ったら、脈が速くなってきた。
「うっ、朱里もう一本、緋の方も頂戴」
私がそう頼むと、もう一本注射器が投げ渡された。中の液体を見ると、緋色の液体が入っている。その注射器の針を迷わず自分の心臓部分のさっき一本刺した場所の真横に刺し、緋色の液体を体の中に注入する。
「おい色、大丈夫か?その二つの液体をいっぺんに心臓部分に注入すると意識飛ぶよ」
「ん...っ。多分平気」
私はそう言ったものの、激痛が中々体から引いていかない。
「くっ...ぅあっ!」
呻き声を上げ、今までで一番の激痛に耐えると、徐々に痛みが引いてきた。
「朱里、もう一回打たせて」
痛みが引いてきて喋れるようになると、私は朱里にもう一回漆黒と緋色の液体を体の中に注入した。
「朱里、ありがとう」
「いいってことよ。だって、色と音は私の大事な実験台だもの。だから、これからも協力してね?次はもっと強力な薬を作っとくから」
痛みが完全に引き、歩けるようになると、私は朱里にお礼を言い、地下の部屋を後にした。
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