第29話 団子3兄妹

「俺らって全員、花より団子だよな~」

花見シーズンを前にして、ススムがつぶやいた。


「失礼ね、あんた達と一緒にしないでよ」

食べ盛りのウィルであるが、ミドルやススムほど食い意地は張っていない。


「あっ、屋台があるよ。行ってみよう!」

ミドルは目が良い。


「おっ、兄ちゃんたち、いらっしゃい! どれも熱々で美味しいよ!」

ねじり鉢巻きをした、屈強そうなおじさんだった。


「へえ、色々あるのね。鯛焼きも捨てがたいけど、さっき話に出たせいで、お団子気分かな」

ウィルは、まだ団子には馴染みが無い。


「出世団子に、醤油団子か。ミドルはどっちにするんだ?」

ススムは特にこだわりは無かった。


「え~っと、出世団子は甘いんだろ? ホントは醤油がいいんだけど、出世するかもって思うとこれもいいな」

おやおや。


「お前、そんなの気にしてんのかよ!」

ススムが小馬鹿にして囃し立てた。


「ミドル、ススムくんの言う通りよ。いま出世団子が食べたい気分でそれを選ぶのなら、何も文句は言わないわ。でも、醤油団子が食べたいのに、出世って言葉につられて醤油団子を買わないだなんて、ナンセンスだわ」

ウィルはぴしゃりと嗜めた。


「ミドル、こういう話ってさ、そこら中に転がってる気がするぜ。中身がどうであろうと、手練手管を使って人間心理を突いてくるんだ。宣伝・広告なんて、その最たるものだぜ」


「ふたりともそこまで考えてるってスゴいな。俺はまだまだだなあ」

ミドルは頭を掻いた。


「でも、安心してね。わたしは甘いのが好きだから、出世団子を買うわ。ミドルとススムくんにも分けてあげる」

ウィルが天使に見えた。


「「わあ、ウィルは出世間違いなしだ!」」

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