第25話 バリバリ最強No.1

「雲水くん。キミの子飼いの弟子が、なかなかの活躍を見せているじゃないか」

大会委員長、ネミロビッチ=ダンチェンコが惨事を見送る。


「ススムのほうは冷静なようでいて、少し驕りがあったのだろうと思います」

決して表に顔を出さないネミロビッチを、雲水は煙たく感じている。


「もうひとりの少年、あれは驚いたな。キミのところに来たのは偶然なのか?」

「まあ、彼の父親とは知らない仲ではないですからな」

ミドルはそんな事情をまったく聞かされていない。


「さあ、はじまるぞ。こんなに昂ぶる決勝戦も、久しぶりだ」

会場の至る所に、カメラが設置されている。委員長室の16画面モニターに、ミドルとニーマイヤーの勇姿が映し出された。




 ドゥニア・ゲランガンの優勝者には、賞金100万ドルと、副賞として太陽光で走る近未来カーが贈呈される。リングから見える位置に、リボンを掛けて飾られていた。


 

 ミドルの目が血走っている。無理もない。ススムのあの姿を見せられては。


「おいおい。そんなに熱くなるなよ、小僧」

冷血漢は、挑発する。


 ミドルが気を張ると、伊勢志摩の孤島でバルマンを降した破軍拳を発動させた。砂浜は無かったが、副賞のソーラーカーが、稲妻を帯びて浮かび上がった。


「ミドル、駄目よ! 反則負けになっちゃう!」

ウィルがミドルに哀願する。

「かまうもんか!」


会場にいた観客が危険を察知し逃げ出す。

「ストップ! ヒチカタくん!」

レフェリーの声も、もはや耳に入っていない。


「こいつ、人間か・・・?」

さしものニーマイヤーの顔にも、畏れがうかがえた。


 キャノンボールと化した暴走車が、ススムの仇めがけて突っ込んだ。

高級ジムを出入り禁止になるほどの怪力ニーマイヤーが、正眼で構え両手で受け止めた。


 蒼い稲妻がニーマイヤーを攻める。ミドルの怒りが、ニーマイヤーのカラダを灼き尽くした。



「雲水くん、あれは・・・なんだ?」

ネミロビッチが驚嘆のまなざしでモニターに食いついている。


「工学的サージカルオペレーションは何人にも施していますが、ミドルはマナエネルギーの還流率において、特異な数字を叩き出していました。その副産物かと」



「ミドル!」

ウィルが駆け寄る。


「こんなやつに手間取ってたら、ススムに合わす顔が無いぜ・・・」

ミドルは勝負に勝って、試合で負けた。

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