第22話 科学的におこなう原始的トレーニング

「漫画でよくある対立構造で、科学的トレーニングを取り入れた強豪校と、熱血が取り柄の弱小校っていう設定があるよな」

ミドルが好きな野球漫画を読んでいる。


「ロッキー4もそんな構図だったな。科学的なトレーニングのドラゴと、アナログなトレーニングのロッキー」

ススムはどちらかというとデータ重視だ。


「時代の流れに乗っかれば、デジタルを駆使した科学的トレーニングってことになるんだろうな」

「お前、思ってもいないことを言うなよ」

ススムはミドルの考えそうなことは百も承知だ。


「科学的トレーニングって言うけど、過去にある成功例を無視してるというか、避けてる感じはあるなあ」

ミドルがこういうのは、何百年、何千年前の書物をひもとくと、現代では考えられないような肉体的躍動を魅せた英雄達の記録が、頻出するからである。


「その点、我らが雲水翁は科学的にアナログトレーニングをおこなう稀なお方だな」

世間的には、科学的にはやりのトレーニングを行う指導法であふれている。


「科学的トレーニングって、すぐ限界を作るんだよね。この辺で休めって。反面、無茶なウエイトを担ぎすぎたりもする」

雲水翁の道場には、ジムに置いてあるようなマシンは一切無い。


「このあいだミドルが言ってたことだけど」

「なんだっけ?」


「機械にやらせておけば仕事がどんどん楽になるけど、って話」

「アレな。機械は機械でどんどん改良させればいいと思うけど、俺は自分のカラダを鍛えて、自分の性能をあげることに興味がある。そうすれば疲れにくくなるし、稼ぎも増えるだろ?」

ミドルの思考は、現代人に薄れつつある。休みを増やしたければ、所得が減ることも受け入れなければならない。


「それとさ、俺がウェイトトレーニングを筆頭に、科学的トレーニングを拒絶するのはーー」

「「好きなものが食えなくなるから!」」

食い意地の張った二人が、腹並を揃えた。極度の低糖質・低脂肪の食事は、育ち盛りのヤンチャ・ボーイズには耐えられない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る