第21話 ハートをWASH!

「こいつ、たたんじまおうぜ!」

「ああ、早く片付けちまった方がいいな」


なにやら物騒な話をしているミドルとススム。


 ドゥニア・ゲランガンの施設は広大だが、自助の精神で成り立っている。何週間も寝泊まりするあいだ、洗濯は自分で行わないといけない。


 たった一枚の下着を洗いたいときもあるので、こういうときは洗濯機より洗濯板のほうがずっと経済的である。ミドルたちは大浴場で洗濯ものを洗い終え、天日干しも済ませていた。

「たたむのって結構めんどうだな。かといってくちゃくちゃなままだとかさばるし」

ススムはパンツを半分に折ってまた半分に折るという工程を踏んだ。


「おいおい、ススム! そいつはイケないぜ!」

ミドルが口を挟んだ。


「こんなのどんなたたみ方でも同じだろ」

ススムは軽くあしらった。


「いや、同じじゃないんだな、これが」

そう言うと、ミドルはパンツのウエストのゴム部分を軽く折り返し、左右から3分の1ずつ折り曲げた。そして裾部分から巻いていって、さきほどのゴム部分を元に戻し、巻き上げたパンツにかぶせこんだ。


「おおーっ! コンパクトになった!」

「だろ?」

こういう生活の知恵はミドルのほうが上手だ。


「これってTシャツでも出来るのかな?」

「ああ、一緒の理屈だぜ。これならタンスの中身もバッグの中も片付くだろ?」

言いながらどんどんたたんでいくミドル。


「サンキュー、ミドル! 作業にしか感じなかった洗濯が、楽しくなった!」

身の回りのことを自分でするのも、修行の内。ゲーム感覚でミドルたちは上達していった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る