第20話 サーサパリラの賑う季節
「よし、次は俺の出番だな」
意気揚々とリングに上がるススム。
「負けるなよ~!」
ミドルがセコンドで焚き付ける。
ススムの相手は屈強な大男、タイタス・アンドロニカスであった。ススムはワン・ツーを高速で繰り返す。
「なんだなんだ、このちびっ子どもは」
タイタスは拍子抜けしている。
「ダンナ、あんまりみくびらないほうがいいぜ」
ミドルがタイタスに忠言する。
「おぼえておこう」
"はじめ"の号令が掛かると、タイタスがススムめがけて拳を振り下ろした。一瞬で終わったかに見えた。だが、その拳をススムは両手で受け止めた。
「力勝負なら負けないぜ!」
ススムが片腕を捉えてひねり倒した。
「この俺が尻餅だと・・・!」
タイタスは驚きを隠せない。
大男は起き上がり、一息ついた。
「ファイト!」
レフェリーが促す。
タイタスは右手で思いきりススムの左頬をはたいた。休む間もなく右頬、そしてまた左頬を平手打ちした。
「ススム!」
ミドルが思わず声を上げる。ススムの鼻から血がしたたり落ちる。
「どうした? この程度で脚に来たか、茶坊主?」
身長差は優に50センチを超えている。小兵のススムではダメージも相当だろう。
「僕を、僕を舐めるなよーーっ!!」
見下ろしていたタイタスの顎を、ススムが蹴り上げた。柔軟のたまものである。
タイタスの巨体がマットに着く前に、ススムが飛び上がって土手っ腹に膝を突き落とした。
「ぐはあーっ!」
(アイツは怒らせるもんじゃないな・・・)
ミドルはススムに畏怖を憶えた。
タイタスはテンカウントでも起き上がらず、ススムに軍配が上がった。
「はい、ごくろうさま」
顔面が腫れ上がったススムを、ウィルがいたわる。
「いたた!」
傷は男の勲章だ。
「ほれ、ススム」
ミドルはススムにドクターペッパーを投げて渡した。
「おっ、サンキュー」
ドクターペッパーには、サーサパリラが含まれている。抗炎症・強壮などの効能がある。
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