第8話 戦場のピクニック

長いディープコバルトの髪を結い、小麦色に日焼けした少女が、ミドルたちを睨んでいた。


「外人さん?」

「観光客かな?」

ミドルとススムはヒソヒソ話をする。


「ハ、ハロー?」

ミドルは覚えたてのたどたどしい英語を使う。


「日本語で問題ないよ。来る前に二週間で学んだからね」

その女の子は軽々しくすごいことを言ってのけた。


「僕はミドルって言うんだ。そしてこっちはススム。君の名前はなんて言うの?」

思春期のミドルだが、物怖じせず異性に話しかける。


「あたしの名前はウィル・インゲニオース。どうぞよろしく」

少女は警戒をといたようだ。


「へぇ、たしかラテン語で天才って意味だね!」

ゲーム好きのミドルはこうした用語に詳しい。


「君みたいな女の子が、なんでまたこんな島に?」

ススムが尋ねる。


「それは・・・」

ウィルは口ごもる。


 その時、海岸から物々しい音が聞こえてきた。

上陸用舟艇から、武装した男たちが足早に向かってくる。


「こっちだ!」


「うわ! なんだよあれ!」

ススムが驚きの声をあげる。

「1、2、3、4、5、6、7人か・・・」

ミドルは意外にも冷静だ。


「姫様、困りますな。このようなお戯れを」

リーダーと思われる、顎髭を生やした男が告げた。


「バルマン、あたしは戻らないと言ったはずです」

そのリーダー格の男は、イーシャナ・バルマンという名だった。


バルマンが顎で合図すると、配下の内の二人がウィルに近寄った。


「待ちなって」

ミドルが低い声を出した。


「子供でも容赦しないぞ」

軍人の一人がミドルを追い払おうと頭を押さえつけた。

ミドルは前のめりになったが、そのまま前回転してカカトをお見舞いした。


「こいつ!」

もう一人の兵士が小銃を構える。










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