第7話 女ロビンソン
七星中学の生徒は、レクリエーションの一環で伊勢志摩の孤島に来ていた。
ミドルとススムは隣の席ということもあり、つるむようになっていた。
「お~っ、絶景かな絶景かな。東京じゃお目にかかれない風景だぜ」
ススムが大いにはしゃぐ。
「ま、俺たち三重県人にとっちゃ、何回も来てるところだから普通に思えるけど、ススムならそう感じるんだろうな」
先日、教師の大山に、「必勝のとなりに」と言われただけにもかかわらず、なぜかススムは、ミドルという下の名前を知っていた。
ミドルが不思議がって問い質すと、雲水が関東の大学にいたころに、ずいぶん世話になっていたそうだ。
雲水からどのようにミドルのことを紹介されていたかまでは不明だが、ミドルとススムは同門で、ススムのほうがやや兄弟子ということになる。
「おっ、美味そう!」
ミドルはめざとくバナナの木を見つけた。
ミドルはわがもののようにもじいてむさぼり食べた。
一方、ススムはヤシの実を落とそうと、幹を揺さぶっている。
「くっそ~、駄目だな」
「俺に任せなって」
ミドルがひょいと跳躍してパンチすると、ものの見事にヤシの実をゲット出来た。
「おい、お前すげえな!」
ススムが驚異的なまなざしで見つめる。
「へへっ、雲水のじっちゃんにかかればこんなもんよ」
ミドルは得意げだ。
だが、ミドルがヤシの実を割ろうとしても、パワー不足のため開けれなかった。
「なにやってんだよ」
ススムが手刀ではねると上部分が綺麗にめくれた。
「ススムもすげえじゃん!」
戦利品を堪能したあと、二人は孤島の散策に出かけた。
岩場の付近に、木で作られた原始的な竿が仕掛けられていた。だが、持ち主は見当たらなかった。
そこからまっすぐ密林に向かって、人がよく通るためか、草の伸びが抑えられて小道ができていた。
ミドルが道をたどっていくと、どこから資材をかき集めたのか、カラフルで瀟洒な小屋がお目見えした。
「おい、なんだよあれ」
ススムが聞く。
「さあ?」
ミドルも知るわけがない。
こわいもの知らずなのか、ミドルが近づいていくと、洗濯物で突然視界がふさがれた。
「うわっ!」
女性モノのランジェリーだった。
「このエロガキ!」
ススムがからかう。
「馬鹿、不可抗力だよ!」
ミドルがあわててその場を取り繕う。
「あんたたち、何やってるのよ!」
勇ましい、女の子の声がした。
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