第6話 新宿の百姓

「あ~、転校生を紹介する。東京からやってきた、阿弥陀あみだススムくんだ」

北伊勢市立七星中学きたいせしりつななほしちゅうがく、1年B組の担任である大山が、そう話を切り出した。


 生徒たちがざわざわしている。三重の田舎に東京からやってくる少年というだけで、期待値が上がる。


「阿弥陀くん、入りなさい」

「はい」


 大方の予想と反して教壇に現れたのは、丸刈りでこんがりと日焼けした、どこか懐かしさを覚える小柄な少年であった。


「阿弥陀くんは変わってるぞ、みんな。大都会の東京で生まれ育ったんだが、家族揃って田舎暮らしへの憧れが捨てれず、こっちへやってきたそうだ。なんでも、むこうでは農業の勉強をしていたらしい。そうだな、阿弥陀くん?」


「はい! 東京はいかんせん耕作地が少なく、都外に出ないとそうした自然体験は出来ませんでしたが、ならいっそのこと、前から好きで興味のあった三重県に越してこようと思いました!」


 クラスメイトから歓迎の声が上がる。東京のような大都会から、わざわざ三重県に来てくれるのは嬉しい限りだ。


 ミドルは教室内の中央で黙って聞いていたが、彼の丸太のような腕に注目していた。

(こいつ、のほほんとしてるけど、絶対すげー力だぞ)


必勝ひちかたの隣が空いてるな。そこに掛けてくれ、阿弥陀くん」

「分かりました!」


 つかつか歩いてくるススム。

席に着くなり、ススムは小さな声でささやいた。

「よろしく頼むぜ、ミドル」

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