第4話 術は長く、生は短し
雲水伯楽。
18歳にして万学をきわめ、古今東西のありとあらゆる武術を取り入れ、雲水流を創始する。もともと穏やかな性格で、俗世間の煩わしさから隠遁し、ここ五大所山に住まうようになったのである。
「終わったぞ」
雲水の言葉で、ミドルは目を覚ました。
ミドルはたいそう寝起きが悪かったのだが、この時ばかりはぱっちりと覚醒した。
上半身を起こして、あたりを見回すミドル。
「どうじゃ?」
「カラダが・・・軽いです・・・」
ミドルは自分の変化を感じているようだ。
雲水がモニターに表示させる。
「お前のマナエネルギーの還流率じゃ」
「97.8%・・・」
「うむ、驚異的な数字じゃな。普通の人間は10%ちょっとじゃ。だから疲れやすいし、常にエネルギーを摂取しなければいけない状態にある」
ミドルはゆっくり立ち上がって両手を見る。
「ちょっと力を入れてみろ」
雲水が声を掛け、ミドルはそれに従う。
ミドルが気を張ると、研究所に落ちていた、ビス・ネジがふわっと浮かび上がった。あたりの空間が磁力を帯びている。
「ふぉっふぉっふぉつ、これでお前も工事現場で活躍できるぞ」
「確かに、これは釘を打つときも無くさないし便利ですね!」
「外に出るんじゃ」
「はい!」
八角堂の前に出ると、山の空気がミドルにビンビン呼応しているのが感じられた。
「師匠! なんだか、カラダがとても気持ちいいです!」
「そうじゃろ、そうじゃろ。どれ、思いっきり高く翔んでみろ」
ミドルが膝をかがめてから跳ね上がると、五大所山の頂上をはるかに越えて見下ろす高さまで届いた」
自由落下の運動式を無視して、上方向に反発する力がミドルから発散するため、ゆっくりと着地することが出来た。
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