第2話 八角堂の戦い

「よっと」

ミドルがチェーンを伝って絶壁をよじ登ると、100坪ほどの小広い敷地があった。その中央に、さきほど見た八角の庵がある。


「雲水のじっちゃん、どこ~?」

《ここじゃよ》


雲仙人は、屋根の上で東方を眺めていた。

そこには、漫画や映画で思い描く、達人の風貌とは似ても似つかない好翁の姿があった。

長い髪を後ろで縛り、つなぎ服を着てたばこをくゆらしている。


「てっきり少林寺みたいなストーリーが始まると思ってたんだけど・・・」

ミドルは後ろ手で髪をかく。


「ワシになんか用かの?少年」

「うん、俺の名前は必勝ミドル! じっちゃんに強くしてもらいたいんだ! だから・・・」

次の瞬間、ミドルは背後に気配を感じたかと思うと、はげしく突き飛ばされた。

立ち上がると、雲仙人は手を休めず連続で突いてくる。


ミドルは防戦一方だ。

(はやい! だけどこれは手を抜いてくれてるな・・・)

「陘(ぎょう)じゃよ、陘で受けるんじゃ、ミドルよ」


「ぎょう?」


「突きはまともに受けてはイカン。谷のようにV字で引いて受け流すんじゃ」

「あっ、それはイメージしやすい!」


隙を見て、ミドルも必勝中段蹴りをお返しする。

が、空を斬り、あえなく尻餅を付いた。

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