破軍のヘルメシヤ

三重野 創(みえのつくる)

第1話 五大所山の仙人

ここは三重県北伊勢市にある、峻峰・五大所山ごだいしょやま

インターネットで全世界が繋がっている現代に、なんとも時代錯誤な山の主がいるそうな。


「てっぺんなら楽なんだけどな~」

声の主は、必勝ひちかたミドル。わんぱくざかりの中学一年生。

座学が大の苦手で、口より先に手が動く。


両親は女の子が生まれるとばかり思っていて、ミドリという名前をつけるつもりでいたのだが、男の子だったので急遽変更、ミドルと命名した。

ちなみに、虹の真ん中(ミドル)は、緑色だ。


ミドルが「てっぺんなら楽」と言ったのは、五大所山はロープウェイで地上と頂上が結ばれているためだ。


「あれか」

ミドルが上を見あげる。


小槍こやりの上に、八角形オクタゴンの建物が構えていた。


「うそだろ・・・」

ミドルは絶句した。


「あそこまでどうやって行くんだよ!」

山の主の住処までに、人が歩いてたどり着けるような道は見つからなかった。

ミドルはやいやいまくし立てた。


《さっきから騒がしいやつじゃな》

そう聞こえたかと思うと、小屋からチェーンが投げ出された。


「サンキュー、じいさん♪」

《バカモノ、ワシには雲水うんすいという立派な名前がある》

ミドルの軽口を雲水伯楽にたしなめられた。



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