第14話 秋田小町の決意

 小町はカレンダーのマル印を見て大きく頷いた。


 印が入っている日付はもちろん2月14日。

 小町はバレンタインデーに昌彦へ手作りのチョコレートを渡すつもりだ。

 当然本命チョコである。

 そしてそのまま勇気を出して告白する気でいた。


 しかしそれと同時に告白する事に不安も感じる。


 それはもし告白を受け入れて貰えなかった場合、今までの関係には戻れないとわかっているから。

 

 今の関係でも小町にとっては十分幸せなのだが、小町にとって昌彦がそうであるように、昌彦の特別な人になりたいと思ってしまった。

 

 その為には今まで通りの関係ではなく、もっと進んだ…… そう恋人関係になる必要がある。

 

 都合が良い事に一週間後にはバレンタインデーがあった。

 なので小町は勇気を奮い立たせて告白する事を決めたのだ。



「頑張れ、私!! きっと大丈夫」


 小町はガッツポーズを取り、自身を奮い立たせていた。


「告白する為にも絶対にチョコレートは完成させないと! 渡すならやっぱり手作りよね」


 料理が苦手な小町は、ネットにアップされている動画を手本にしながら手作りチョコの製作に取り掛かった。


 しかしそのせいで家族には甚大な迷惑がかかる事になる。



 ◇  ◇  ◇



 小町はチーズケーキを食べた後、バレンタインデーが来るまで料理部には行かないつもりだ。

 その理由は【会えない時間が愛を育む作戦】と言う記事をネットで見つけたからだ。

 その記事を呼んで、感銘を受けた小町はその記事に書かれている通り、昌彦と距離を置く事にした。


 そして小町の【会えない時間が愛を育む作戦】が実行される。

 

 一日目、昨日会ったばかりなので、大丈夫だった。(昌彦からメッセージが一件も無いので少し寂しくなる)


 二日目、放課後部室に行きたくなったのだが、グッと我慢する。(何度も小町からメッセージを送ろうと携帯に手が伸びる。ギリギリ送らずに我慢した)


 三日目、昌彦に会えない事が原因で知らない内に機嫌が悪くなる。(結果、本人の知らない所で生徒会役員のメンバーに対して恐怖を与える)

  部室に顔を出さない小町の事を心配した昌彦からのメッセージに秒で返信してしまう。(この時点で【会えない時間が愛を育む作戦】は失敗!! だが機嫌は良くなる)


 四日目、チョコの材料を買いにデパートに出掛ける。しかし何を買ったらいいか分からず昌彦の偉大さを実感する。


 五日目、家でチョコづくりに挑戦し、激闘の末何とか形にする。(親に責任をもって掃除しろと滅茶苦茶怒られる)


 六日目、家に帰ってから恋愛映画を3本見た後、入念なリハーサルを開始する。

     そしてメッセージで「明日の放課後部室で待っていて」と送る。

     しばらくして、返ってきた返信には「わかりました」とだけ書かれていた。

     (小町、緊張して眠れなくなる)    


 七日目、運命のバレンタインデーの日、小町は手作りのチョコを梱包した箱を鞄にいれて、学校へ向かう。(髪型のセットにいつもの倍以上の時間をかける)


 そして2月14日、秋田小町の運命の日が訪れた。

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