第11話 買い物に行こう

 デパートでは色々あったが、おかげで作るデザートが決まった。


 シュークリームを食べた後に回ったケーキ屋で小町先輩がチーズケーキを選んだのだ。

 チーズケーキは簡単に作れるケーキの一つで、ふわっふわのスフレチーズケーキや、ビスケットの下地から作るレアチーズケーキなどと種類も多い。

 当然、俺も何度かチーズケーキを作った事があった。

 それにアレンジもしやすいので、小町先輩に合ったオリジナルのチーズケーキを作る事が出来る。

 俺は親指を立ててサムズアップの仕草でチーズケーキを作る事を了承した。


 次の日、俺は先輩のラインに今後の予定を説明したメッセージを送る。


「今日、材料を買いに行くので、チーズケーキを作るのは明日になります。だから今日は部室には誰もいません」


 すると五秒後には返事が送られてきた。


「私も一緒に買い出しに行きたい(*'▽') って言うか絶対に行くから!!!!」


 絵文字入りの可愛らしいメッセージだ。

 どうやら買い物に付いて来るとの事だが、別に重い荷物になる訳でもなく、一人で十分なので、小町先輩には自分の用事を優先して欲しい。


「小町先輩は生徒会の行事で忙しいんじゃないのですか? 無理をして付き合わなくて大丈夫ですよ」


「私がお願いしたんだから、絶対に一緒に行くから! もしも勝手に一人で買い出しに行ったら…… 泣く(´;ω;`)ウゥゥ」


 仲良くなってから知ったのだが、小町先輩はとても気さくな性格をしていた。

 

 これは【高嶺の花】として遠くから見ているだけの者には絶対に想像出来ない驚愕な事実だろう。

 

「わかりました。じゃあ、今日の授業が終わった後、部室で合流しましょう。それから買い出しに行くってのはどうでしょうか?」


「了解~(*´ー`) 授業が終わったら、部室に飛んで行くから待っててね❤❤❤」


「わかりました。多分俺の方が速く部室に行けるとおもいますので先輩が来るのを待ってます。無理はしないでください。ゆっくりでいいです」


 そんなラインのやり取りをしてしまった為に俺は部室で小町先輩を待つ事となっていた。

 俺は授業が終わった後、部室に立ち寄ると今日買っておく食材をチェックしていく。

 今回はレアチーズケーキを作ろうと思う。


「必要な材料はクッキーに、生クリームにクリームチーズ。それに薄力粉に卵やグラニュー糖。部室には半分位の材料はあるけど、クッキーとか余り使わない生クリームとクリームチーズは買わないと駄目だな」


 スマホのメモ帳に必要な材料を書き込み、買い忘れが起こらない様にしておく。


 するとドアが元気よく開かれ、小町先輩が飛び込んで来た。


「米倉君、待った!?」


「小町先輩、早かったですね。俺も少し前についたので、全然待っていませんよ」


「めっちゃ楽しみだったから、今日の用事は全部休み時間中に片づけたの」


「お疲れ様です。流石は小町先輩ですね。ですけど無理をしたら駄目ですよ」


「この位なら全然余裕。イベントが重なった時なんて本当の地獄の様になるんだから」


 小町先輩はキラキラとした晴れやかな笑顔を浮かべている。

 その表情を見れば、先輩の言葉どおりチーズケーキを楽しみにしてくれている事がわかる。


「じゃあ、早速食材を買いに行きましょう」


「うんっ!!」


 小町先輩のテンションに引っ張られ、俺も自然と気合が入っていた。


 二人で学校を並んで出ていると、周囲の学生達が俺に視線を向けて何か話している事に気付いた。

 俺はその時になって、今となりを歩いている女性が学校の有名人である事を思い出す。

 それに伴い俺は何だが申し訳ない気持ちに襲われてしまう。

 それは才色兼備な小町先輩の隣を全然釣り合っていない俺が歩いている事で、小町先輩の評価が下がってしまうと言う事だった。


「あの…… 小町先輩……」


「米倉君、どうしたの?」


「いえ、少し離れて歩いた方がいいのではないかと……」


「えっ!? どうして?」


「いや、だって、みんなが俺達の事を気にして見ているので、俺と並んで歩いていたら小町先輩が陰で何か言われるかもですし……」


 すると小町先輩はむすっと頬を膨らませた。


「私は誰に何を言われても気にしないから、米倉君は私との事を何か言われたりしたら嫌なの?」


 今度は俺の顔を下から覗き込む仕草でそう言ってくる。


 その可愛らしい仕草に俺の心臓は鷲掴みされた様に、大きく鼓動を始めた。


「いや、俺は何を言われても大丈夫なんですが、小町先輩の方に迷惑がかかるかと…………」


「校則にも男女が一緒に帰っては駄目って書かれてないし、男女間の交際も問題になった事はない筈よ。流石に不純異性交遊は…… 駄目だけどね……  だから、私に迷惑がかかることは何一つとしてありません。うん、この話はこれで終わり!!」


 そう言い切る小町先輩は何故か頬を真っ赤に染めていた。

 

 その後、俺達は必要な材料がそろっている大型のスーパーに到着した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る