第10話 秋田小町の初恋
小町は自室のベッドの上で身悶えていた。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ」
ゴロゴロと右に転がったと思うと左に転がる。
「えへへへ。うふふふふ」
そして突然転がるのを止めると、スマホの画面を見ては表情を崩してにやけだす奇行を繰り返していた。
普段から淑女と呼ばれている彼女なら絶対にやらない行動。
もし親しい者が今の小町を見たなら、きっと大急ぎで病院に連れて行く事だろう。
秋田小町がこうなった理由、それは…… 米倉昌彦とデパートに出かけたからだ。
デパートで昌彦にナンパ男から守ってもらった小町は自分の中で少しづつ育まれていた想いにやっと気付く事となる。
小町は最初、米倉昌彦の事を変な後輩だと思っていた。
けれど昌彦の料理を食べ感動を覚えた後、少しづつ仲良くなりはじめてからは小町の心情も変化していく。
だがそれが恋だとは思っていなかった。
しかしデパートで昌彦が身を挺して助けてくれた事により、小町が気付かなかった想いを自覚する事になる。
昌彦は震える程怖かったにも関わらず、自分の為に勇気を出して助けてくれた。
目の前で昌彦の優しさと強さに触れて、小町は身内以外には見せなかった自分の弱さを昌彦に見せてしまう。
その時、小町は昌彦の事が好きだという想いを自覚したのだ。
その後テーブルに座っている時、目の前でボーっと考え事をしている昌彦の横顔を盗み撮りした小町は、その写真を見てはニヤけるという変態行為を繰り返しているのだった。
「でも米倉君って私の事どう思っているんだろ?」
当然気になる事である。
「出会って間もないし、もっと私の事を知って貰ってからアプローチした方がいいのかな?」
今まで勉学に重きを置いてきた秋田小町も米倉昌彦と同じく恋愛初心者だった。
だからこそ自分のスペックの高さには気付いておらず、昌彦に告白しても成功すると言う事がわかっていない。
今までは勉強が忙しい上に生徒会長としての仕事があったので、恋愛に興味もなかった。
だから自分から男性を好きになる事は無く、全て相手から好意をよせられるばかりだ。
なので告白されたとしても全てを拒絶してきたのだが……
今回は自分から異性を好きになってしまった。
秋田小町も年相応の乙女である。
一度火が付いてしまえば、勢いは時間が経つごとに強くなっていく。
「よく考えてみたら、私…… 米倉くんの好きな物も血液型も誕生日も全然知らない……」
最近は一緒にいる時間も多かったのだが、昌彦の事を全然知らなかった事にショックを覚え落ち込みはじめた。
しかしすぐに気持ちを切り替えて新しい目標を立る。
「よし! 明日、米倉くんの血液型を聞き出そう。その次は好きな食べ物とか好きな芸能人! 後どんな曲を聞いてるのかもしりたいし……」
新しい目標を立てた小町は、再びスマホを手に取り昌彦の写真を開くと頬を緩めるのだった。
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