第5話 才色兼備な生徒会長が食材を抱えて部室に押しかけてきます!
翌日の放課後、俺は今日も部室で本を読んでいた。
今日は秋田先輩と会う事もなく、やはり昨日限りの事だと俺は再確認をしていた。
しかし……
「うん、やっぱりいた。米倉君は今日も本を読んでいるの?」
突然ドアが開かれ秋田先輩が飛び込んできた。
「そうですね。昨日はどうも」
「こっちこそ、とても美味しかったわ。今日は昨日使った食材の補充に寄らせて貰ったの。学校の近くにスーパーが在るから便利だよね。貸し借りは無いにしても食べた食材は補充しないと私の気が収まらないから…… だから受け取ってよね」
そう言って手渡してきた食材の量は昨日使った量よりも確実に多い。
「秋田先輩、これじゃ貰いすぎですよ」
俺の返答を予想していたのだろうか?
振り返ると先輩は俺に背中を向けた。
「実はね。私、秋田って呼ばれるのが好きじゃないんだ。だって秋田って字を書き換えれば【飽きた】って書けるでしょ? だから呼ばれる度に「飽きた、飽きた」って言われている様な気がして、少し寂しくなるんだよね。だから米倉君は名前の小町って呼んでくれないかな?」
そして再び回転し、俺の目を見つめた。
突然のお願いと共に頬には【名前で呼んで欲しい】と言う文字が……
そう書かれてしまっては俺には抗う事は難しい。
女性を名前で呼ぶのは生まれて初めてかもしれない。
恥ずかしさで顔に血が上り温かくなるのが自分でもわかる。
自分に絞り出せる精一杯の声で先輩の名前を呼んだ。
「小町先輩……」
「はいっ! やっぱり名前で呼ばれる方が私は好き。これからは米倉君も名前で呼んでね」
元気よく返事を返す小町先輩はとても嬉しそうで、眩し過ぎる笑みを浮かべていた。
この笑顔を向けられて陥落しない男はこの世にいないだろう。
「そうだ、今日も食べていきませんか? 貰いすぎの食材でも出来る料理を」
動揺を隠す為に俺が言った言葉に小町先輩が反応を見せる。
小町先輩の顔を見てみると、頬には食べたい料理が書かれていた。
「またそんな事を言って…… それで米倉君は何を作るつもりなのかな?」
今度は小悪魔的な表情で先輩は問いかけてきた。
俺は小町先輩が食べたい料理名を口にする。
「それはですね……」
小町先輩はその日から食材を抱えて毎日部室に顔を出すようになった。
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