第2話 ドラゴンじゃないです!龍です!


 龍が消えた後、バクバクと心臓の音がうるさく、〇〇はまともに思考ができなくなっていた。さっきの龍は何だったのだ!?という疑問が〇〇の思考を埋め尽くす。


 しかし!今は体を動かせるようにならなくては行けない。そうでなくては〇〇はさっきのような生物から逃げることができないからだった。


 どうやって体を動かそう。また〇〇は考える。現状として、〇〇が人間としての感覚で、動かせる所は腕と手、それと、首から上だけである。例えるのならば、普通の人間の下半身の代わりに、使い方のわからない蛇の尻尾が付けられた感覚であった。または、赤ちゃんの頃に体の動かし方がわからないような感覚であろうか。


 そうだ!今までの感覚で二足歩行で歩こうとしたのが行けなかったのだ!と〇〇は思いつき、はいはいをするような感じで足を動かす。するとなんと、体が前に進んだ。


 四足歩行の生き物としての本能からか、〇〇は人間として、二足歩行をしていた時のようなフィット感と安心感を感じた。


 手と足を使い、体を起こして、〇〇は四足歩行で岩に向かって進む。そして、岩にしがみつきながら登る。体を岩と岩の間に挟んで支えて、少しずつ登っていく。苦労して岩を登りきった〇〇は体を起こし、周りを見渡した。


 まず最初に〇〇の視界に入ったのは、霧だった。霧が海のように広がり、自分の乗っている岩より低いところを埋め尽くしている。そして、時折、霧の間から下に見える険しい岩肌と、申し訳程度に生えている植物。そして、その奥に森が一面に見える。そして、更に下が見える。


 客観的に、ここがどこかと考えるならば、とてつもなく高い山か、深い谷だな。あと、落ちたら確実に死ぬな。と〇〇は考える。ここでもやはり科学者の思考の仕方だ。普通の人ならば、まず恐怖から叫ぶか、思考できたとしても、冷静に状況を見ることはできないはずだ。まぁ、〇〇の場合はテレビに出ているため、こういった驚く場面に遭遇することが何度かあったためだ。しかし、それを持ってしても、先程の龍などの、本能からの恐怖は無くならなかった。


 とりあえず、無闇に行動する事だけは絶対にしないようにしよう。と〇〇は心に刻む。そして、落ちたら嫌だから、と岩から降り、卵の横に戻る。


 今は現状の把握。または整理が必要だ。〇〇は自分の頭の中で、無数の写真入れの額縁のようなものと、それらを結びつけている紐があるところを想像していた。


 この額縁の中に自分が死んでから、今までの情報を当てはめていく。まず、別世界という事。次に、自分が人外に転生したという事。そして、自分のいる場所が凄く標高の高い山か、深い谷という事。


 これらを自分が人間として生きていた時の記憶と照らし合わせる。すると、異世界というワードに、たくさんの紐が結ばれていく。


 その中で最も今の状況と似ているものが、書店の異世界転生という本だ。他のものは、研究発表会での、他の科学者のパラレルワールドについての研究結果、小説、論文などだ。


 さらに、詳しく思い出していくと、だいたいは、ステータスオープンやら、ステータス、など呟き、自分の能力値を把握していた。よって、〇〇はそれにしたがって、ステータスなどを呟こうとした。


 「グルアァス」(ステータス)


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名前 ラファニール


種族 幼龍

 

レベル 0


生命値 13200


魔力 7500


スキル  スモールブレス  飛翔  龍核


称号  記憶を持ちし者  龍神の加護


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 といったものが、〇〇の頭の中に出てきた。驚いていた〇〇はすぐに気をとりなおして、それらを見ていった。そして、思った。転生先は蛇でもなく、ワニでもなく、トカゲでもなく、ドラゴンでもなく、龍だった!こんな事誰が信じるだろうか。異世界と言ったらドラゴン!という感じの考えもよくあるが、なぜゆえ龍なのだろうか。


 一応、〇〇の名前がわかった。と〇〇と作者は安堵していた。きっと、〇〇は自分が何者なのか、という不安感からだろう。作者からの安堵は不思議でたまらない。〇〇という文字を打つために、スペースキーを連打する大変さからだろうか。


 〇〇、すなわち、ラファニールは、自分がこの世界で強いのか、スキルと称号について、疑問に思っていた。


 スモールブレスは、よく漫画などで、ドラゴンの口から吹かれる炎というような物。という事と、飛翔というスキルは、自分がさっきのドラゴンみたいに飛べるということがわかる。しかし、龍核とはなんなのか?とラファニールは考える。


 そして、そうだ!こんな時は、異世界転生という本で学んだ事を有効活用すべきだ!という結論にラファニールはたどりつき、よく主人公が心の中や、口でスキル名を呟いてスキルを使っているという事を実践してみようと思い、先ほど降りた岩を登る。


 そしてまず、やはり、ドラゴンなら、ブレスでしょ!とラファニールは考え、心のなかでスキル名を呟いた。最も、ラファニールはドラゴンなどではなく、その上を行く龍なのだが。


 (スモールブレス!)


 すると、キュイ~ンという甲高い音と共に、ラファニールは、口の中に、何かができているという感じがした。それと共に、息苦しくなってきたため、ラファニールは口を開けて、大きく息を吸い込んだ。すると、先程の違和感がさらに増し、それが完成したかに思えた。


 それが勝手に飛んでいかないようにと、ラファニールは、口を閉じた。さらに、時々、視界の真ん中から見える顔の先から、小さい閃光がパチっと出てることも見えた。


 そして、ラファニールは顔を、少し下向きに、口を開け、口の中の違和感の塊を出すように強く息を吐いた。


 すると、チュンという音と共に、ラファニールの口から一線の細い光の線が出てきて、斜め下の雲海に消えていった。少ししてから、ラファニールの耳に、下から、ドーンという音が小さく聞こえてきた。驚いて音の聞こえた方を、見るラファニール、その視界には、真っ白な雲の間から灰色の煙と、うっすらと、赤い炎のような、溶岩のようなものが、ちらちらと見える。


 ヤバすぎる!それがラファニールの感想だった。スモールブレスでこれだけなのだから、成長して、ちゃんとしたブレスになったら、どうなってしまうのだろうか。


 ちなみに、先程のブレスは、ラファニールの住んでいる場所の下の、人間の間では、【クライアナ樹海】と呼ばれていて、ラファニールのいる場所【霊峰】(人間の間で呼ばれている)を中心とした半径約、35キロ。その広大な森は、上層、中層、下層、の3つから成り立っていて、高ランク冒険者でも、中層以降に踏み入った者は約1割しか生還できない、と恐れられている樹海の下層部のブレスの着弾地を

中心に、半径約10メートルを焼き尽くしていた。


 じゃあ次は、飛翔を使ってみよう!とラファニールは興奮していた。理由は言わずもがな先程のスモールブレスである。科学的法則を完全無視して作り出されたブレスである。それが、ラファニールの前世である科学者の、存在意義を粉々にしたのと共に、異世界転生の本、特有の魔法である。そして、また心の中で呟いた。


(飛翔!)と。



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皆さん元気ですか?作者です。旅行に行っていて更新できなかった、悪い作者です。

最近タイピング音がうるさいとよく言われます。悲しいです。まぁそれは置いておいて、楽しんでくれたのなら応援のハートマークをください!(がめつい)

皆さん今年も、お仕事や勉強をがんばってください!





 

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