ランブルスコ セッコ

「酒の大沢」

に行ってみたいと言っていた成美俊太郎が店を訪ねていた。

「へぇ~ 酒屋ってこんなところなのか」

 物珍しそうな顔で店の中を回る彼。さながら初めて見たものを観察する子供の様であった。

「そんなに珍しい?」

「あ? 珍しいに決まっているだろ。未成年は普通酒屋なんかに入ろうなんて思わないからな。

下手したら補導かもしれないしな」

 日常になりすぎていて忘れていたが、確かに僕もここで働くまでは酒屋に入ったことが無かったのだ。実際は補導することなんて、まずないのになぁ~

「ここに来たら見てみたい酒があったんだけど、お前に言えば分かるかな?」

「なんてお酒?」

「モエ? だかシャンドンってお酒」

 多分、モエ・ド・シャンドンの事だろう。有名なシャンパンの名前だ。

ワインコーナーからに持ってきて成美に見せると

「なーんだ、もっとイカした見た目の酒かと思っていたけど、普通のワインと変わらねぇのな」

 目に見えて落胆する彼。

「どんな見た目を想像していたの?」

「もっとこう、キラキラした感じ」

「うん?」

「俺の中のイメージはもっとこうキラキラした感じだったんだよ」

 確かにモエの見た目は派手とは対極だ。でも、それが高級感を漂わせているのだと僕は思うのだが…言っても仕方ないか。

「そもそも何でモエ?」

「『Killer Queen』って曲の冒頭に出てくるから気になっていたんだ。流石にお前も知っているだろ?」

 手で触れた物を「爆弾」にしたり、時間を巻き戻したりしそうだけどたぶんそれとは関係ない。ちなみに僕は3期が一番好きです。

「知らないなぁ~」

「超有名なロックバンドの曲だぞ。なんで知らないんだよ」

「知らないから」

「まぁ、いいや。いや、良くないや。今度CD持ってくるから絶対聞けよ!」

 適当に成美をあしらいながら、モエを片付ける。

そうしていると、思い出したかのように彼が話し出す。

「そういえば、あの件いいってよ。ただ、夜にそれも飯食いながらでいいならって条件が付いた。それでもいいか?」

「無理を頼んでいるのはこっちだし、構わないよ」

「んー、それじゃあ予定を詰めるな」

「よろしく」

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