ランブルスコ セッコ ②
落ち着いた空気が漂い、壁には大きな絵が何枚もかけられている。
座席もシックな赤色が雰囲気を醸し出しており、他の席にはエスカルゴやステーキが並べられている。どこの高級料理店だって? 違う、違う。
超低価格で学生の味方、赤白緑の看板の某有名ファミリーレストランに来ているのだ。
「鵜飼は何頼む?」
人を待っているのだが、何も頼まずにいるのは店に良く思われなさそうなので何かを注文しようとなった。
「ミラノ風ドリアかな~ 安いし美味いし」
300円と低価格なのに、超美味い。この店に来ると必ずこれを頼むくらい大好きなメニューだ。安すぎて店が潰れないか心配になるほどだが、潰れる気配はないし何か裏技的な方法で稼いでいるのかもしれない。
「俺は、アラビアータでいいかな。それじゃあ店員呼ぶな」
来てくれた店員にドリングバーと各自のメニューを伝える。
それから待たされることもなく料理が揃った。
それらを楽しんでいると
「成美君、探したよ!」
かっちりとスーツを身にまとい、長い髪がサラサラと揺れる女性が話しかけてきた。
「川出さん遅いですよ~ 遅いからとっくに始めていますよ」
明らかに年上の女性に気楽に話しかける成美。
「それは別に構わないけど、中にいるなら先に言ってよね~ てっきり外で待ち合わせだと思って、結構待たされたんだから!」
「すんません。受付表に名前あるし分かるかな~って思ったんだけど…」
「もしかしてと思って見たわよ。でも、成美だとか鵜飼なんて名前どこにもなかったじゃない!」
成美と親し気な様子と、僕の名前を知っていることでこの人が待っていた人だと確信する。それなら、早速挨拶したほうが良さそうだけど中々割り込めない。
「あっ! そういえば受付表にふざけて『鬼龍院』って書いたんだったわ。すんません」
「たまたま店員さんに男の子二人組いないか聞いたから良かったものを…」
「あー、もうすんませんって! それよりそこで立っていると周りの邪魔になるんで座ってくださいよ」
「もう、成美君はさぁ…」
とぼやきながら、二人の迎え側に腰掛ける。
「気を取り直して、まずは自己紹介と行こうか。私は川田智恵美。ごめんね、仕事が忙しくて遅くなっちゃった」
「忙しい時にすみません。僕は鵜飼大輔です。今日はよろしくお願いします」
深々と頭を下げていると、隣から
「川田さんにそんなに畏まらなくていいぞ。年は上だけど学年は同じなんだしさ」
と茶々を入れられる。
「鵜飼君はもう少し気楽にしていいよ。でも、成美君は態度を改めたほうがイイと思うよ」
成美が何か言い返したそうな顔をしている。このままだとまだ口論が続きそうだからと思い、
思い切って本題に入る。
「川田さん、いきなりですけど『働きながら高校に通う』ってどんな感じか教えてもらえませんか?」
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