サントリー ザ・プレミアム・モルツ マスターズドリーム 完

 もう荷物が届いたのか、送った翌日に母から電話がかかってきた。

「お中元届いたわよ」

「良かった。無事届いたのか~」

「気を遣わないでよかったのに」

「忙しくて盆に帰れそうにないからさ。気にせず受け取ってよ」

「んー、分かったよ」

 そんな風に話していると、電話の向こう側が騒がしくなってきた。

「あれっ? 忙しかった?」

「ん? あー、隣で電話代わって欲しそうにお父さんがぐちぐち言っているのよ」

「なら変わってよ」

「嫌」

「何で?」

「お父さんと喧嘩中だから」

「えっ? なにかあったの?」

「夕飯いらないって言わずに、飲み会に行ったの」

「ははは」

 両親は相変わらず仲がいいようだ。

「もう! うるさい! どっか行け!」

 電話から母の大きな叱り声が聞こえて来る。父さんは言い返せていないようだ。

父さん頑張れ…

「四本しかないから仲良く分けてね」

「それはお父さんの態度次第かな~。そういえば、熨斗も包装も得意になったのね」

「そ、そう?」

「前はミミズみたいな字で、くちゃくちゃになっていたもん。すごく上手くなっているよ」

「そっか、それなら良かったよ」

「しっかり成長しているみたいだし、そろそろ言わないといけないわね」

 さっきまでの楽しそうな口調から一転、声音に真剣さが宿ってきた。

「なんの話?」

「学校の事」

 ずきっとした。学校。そのワードは僕の心に突き刺さる。

「学校から復学するなら、今年中に決めて欲しいって言われたのよ。少し前に言われたのだけど、気負うかなと思って今まで言わなかった。ごめんね」

「いや、ありがとうね」

 面倒な学校の全部母に丸投げしているのだ。文句言える立場ではない。

「大輔が自分で決めたことなら、何でも応援するよ。だから、復学以外の道も考えて自分が納得した答えをまた教えて」

「うん…」

「あんたなら大丈夫よ。まだ17歳なのに、普通の社会人と同じように働けている。それは本当に凄いことよ。だから、自分に自信を持ちなさい」

「分かったよ。頑張る!」

「頑張れ!」


 僕はこれからのことを決める期限を自分の中で定めた。

 期限がないとずるずるとギリギリまで悩んでしまいそうだから。

『12月9日』

この日に母に結論を伝える。

この日は、僕の18歳の誕生日だ。

18歳は何かと子供と大人を分ける基準になる。

だからこそ、この日なのだ。

この日に母に伝える。

それが、僕が大人になる一歩になると思うから。

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