ボンベイ・サファイア ③
山田先生の言葉に私は思わず
「それに夢なんてこれっぽっちもない!」
と声を荒らげていた。
そして、すぐに我に返った私は、先生を無理やり押し切って生徒指導室を後にした。
翌日
先生は私に何度も話しかけようとしてきた。でも、もう鬱陶しい存在としか思えなくなった私はひたすら無視し続けた。
だが、先生は翌日も翌々日も私を追いかけてきた。それでも、私はひたすら無視し続けた。
その次の日。土曜で学校は休み。
やっと先生から逃れられたと思っていると、親父が私の部屋にきて
「先生が来てる」と言うのだ。
親父がいる手前、無下に出来ず先生を部屋に通した。
ここ数日で、もううんざりだったから先生に少し強めに「もう関わらんでください」と言った。すると先生は「分かった」と答える。
やっと解放されると思って気を抜こうとしていると、さらに先生は話を続ける。
「だが、条件が一つだけある。お前の『夢』を聞かせてくれ。そしたらもう何も俺からは言わん」
もう訳が分からなった。なんで私にそこまで関わろうとしてくるのか分からない。
「何で…?」
私はいつの間にか尋ねていた。
「何でそこまで私に関わるんです?」
私は一度も頼んでないのに。一人で決められるはずなのに…
「教え子のそんな顔見たら、そのままに出来ないのが先生ってもんだ」
「はっ? いつ私がどんな顔したって?」
「まさに今だよ。その不安で仕方ない顔」
思わず私は、部屋の姿見で自分の顔を見る。
何時からだろう…こんな引きつった顔…
「何でもねぇよ」
無理に表情を作って強がりを言う。
それを無視して先生は問いかけてくる。
「なぁ、誰かに相談したのか? これからの事を」
「………………」
「親父さんが忙しいと相談しにくいよな。迷惑かけまいと自分だけで決めようと思っただろ?」
「………………」
「最後に決めるのは自分自身だ。でもそこへ行くまでの道で誰にも頼れないのはすごくしんどいよな。だからさ、先生のことは壁だと思って今の悩みをこぼしてみないか?」
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