キリンクラシックラガー 完

 あの後、ビールを一缶だけ持ってきて軽く包装して紙袋に入れてゆうき君に渡した。勿論お会計は母親がしてくれた。

 渡してあげると、先ほどまで叱られていたのが嘘であったかのようにパーッと笑顔を浮かべる。

「お兄ちゃんありがとう!」

「お姉ちゃんありがとう!」

 お花が咲いたようにぱーっと咲いた笑顔はすごく心地良いものだ。

「また来てね!」

「うん!」

 お母さんと手を繋いで、こちらにぶんぶんと大きく手を振り続けながら、帰路についていった。


数日後————

 夕飯の片づけをしていると、天音に携帯の画面を見せられる。

 そこには、依然と同様に楽しそうな笑顔を浮かべたゆうき君とビールを片手に持ったお父さんの姿が映っている。さらに写真はもう一枚あって、お父さんがビールの泡で髭を作っている姿に爆笑しているゆうき君の姿もあった。見ていてすごくほほえましい気持ちになる。

「いい笑顔だよな」

 天音も表情を緩めながら、その写真を眺めている。

「そうですね。今回はちゃんと本物を売れたのも良かったですね」

「あれは、あれで将来楽しみだろ?」

 以前買いに来た時は、母親の願いもあって高価なモエ・ド・シャンドンでなく、安価なシャンメリーを売ったのだ。いい考えだと僕も思っているけれど…

「そうですけど、やっぱり子供を騙しているみたいだからなぁー」

「なぁーに、気にすんなよ。文句言ってきても返り討ちにしてやるからさ」

「そういうことじゃないだよな~」



 ゆうき君の家族のようにお酒を通して家族が繋がる。

 そんな繋がりが長い間続いてきた。そのおかげで、今もこうして『お酒』はみんなに愛され続けているんだと思う。

 お酒はただの飲み物かもしれない。でも、やっぱり何か素晴らしい力が備わっているからこそ、こんな風に人々を幸せにしてくれるのだろう。

 幸せをもっともっと届けられるように、これからもこの仕事を頑張っていきたいと僕は思う。

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