キンミヤ焼酎 ⑤
「キンミヤ焼酎って分かるか?」
「分かりますよ。水色のラベルのやつですよね?」
それくらい僕でも知っている! 確か……
キンミヤ焼酎……甲類に分類される焼酎。そもそも焼酎には甲類、乙類と分類がある。
甲類は香りや癖がなく、いうなれば無味無臭で色々なものを割って楽しめる。逆に、乙類は原材料の風味や芳香がありそれを楽しむ。要は、甲類は副材料として、乙類は主材料として楽しむものなのだ。
(人によって楽しみ方は変わります。これは、ただの一例です)
最近では、甲類は連続式蒸留焼酎、乙類は本格焼酎と呼ばれることもある。
付け加えてキンミヤの説明をすると、ラベルは、水色で中心に金色で『宮』と書かれている。
また、「下町の酒場を支える名脇役」と言われるほど人気が強い。
でも、何でいきなり聞いてきたのだろうか?
今話し出すということは何か深いわけがあるのだろう。
「ああ。お前にはこれを作っている会社の営業精神を教えたくなったんだ」
そう言われると、気になってくる。
そわそわしながら、彼女の次の言葉を待っていると、フフと少し笑ってまた話し出した。
「これを、作っている会社は株式会社宮崎本店って言う。宮崎本店では昔から大事にしていることがあるんだ。なんだと思う?」
「異物混入しないとか?」
「ハズレだ。まぁ、それも大事なことではあるけどな。答えは『昔ながらの足を使った、顔をつき合わせた営業を大事する』だよ。
今時、古臭いって思わないか?」
「い、いや」
否定はしたが、確かに少し古臭い気もする。
今時、電話やメール、インターネットでいくらでもコミュニケーションをとることが出来るのだ。それなのに、足を運び続けている……
「でも、それにも深い理由があるんだよ。それはな—————
初めはキンミヤを使ってくれる店なんか少なかった。でも、使った店がこれは良いって周りに勧めてくれるようになって、次第に使ってくれる店が多くなっていった。その繰り返しで今の地位にまで上り詰めたんだ。
だから、ここまで育ててくれた人たち、「お得意さん」に感謝の気持ちを持っている。
その恩返しと、自分たちがそうしてもらったように駆け出しのお店を助けたいって思いで、
昔ながらの顔を突き合わせた営業を続けているんだそうだ。
この会社の営業精神は『老舗の得意先を大切にする!』
簡単なことだが、実際にやるのはすごく大変なことだ。
でも、それをしているからこそ、ずっと客が付いてきているんだと思う」
「なるほど」
「だからさ、お前も少しはその営業精神を見習ってみろよ。うちの店を作るのは私とお前だけじゃない。来てくれる客もこの店を作ってくれている。そう思えばさ、どんなにむかついていても、いつも通りの接客が出来るようになるんじゃないかな」
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