キンミヤ焼酎 完
チーン
「いらっしゃいませ」
今日も今日とて花見日和。
花より団子、いや花より酒なお客さんが溢れかえっている。
桃色の世界に、葉桜も混じり始めたからこの喧噪もそろそろお終いだろうか。
桃色に浮かぶ若々しい緑。
暇そうに空を眺めている屋台のおじさん。
そんな光景が好きだから、次の休みに観に行こうかな。
チーン
「いらっしゃいませ」
挨拶をしていると、奥からお客さんが会計にやってきた。
「ありがとうございます」
この前、僕を気遣ってくれたおばあちゃんがまた来てくれたようだ。
「お会計364円です」
いつものように会計を行う。
そうしていると、おばあちゃんが明るい声音で話しかけてきた。
「お兄さん、元気になったのね」
「あ、はい。その節はご迷惑おかけしました」
「迷惑なんて、そんなことないのよ。でもね、お兄さんはそのほうがいいわね。
お兄さんもすっかりお店の顔にもなったし、これからもお世話になるわね」
「はい、よろしくお願いします」
袋詰めを終えた荷物を手渡しする。
「ありがとうね。また来るわ」
そうして、おばあちゃんは店から出ていった。
おばあちゃんの顔には柔らかな笑みがあった。
その笑みは僕を支えてくれる。
お客さんがくれる「ありがとう」に心が弾む。
「また来るよ」は飛ぶようにうれしくなる。
いらっとするお客さんは今日も来た。
だけど、それ以上に良いことが溢れている。
僕はこの仕事が好きなのだろう。
お客さんのおかげで好きなこの仕事ができている。
そのことへの「感謝」を忘れずに今日も頑張ろうと思う。
キンミヤ焼酎のように僕も誰かの
「名脇役」になりたいな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます