ドライプレミアム豊穣 ⑤
「休みは楽しめたか?」
あっという間に夕飯時。
休みもの時間もあと少しだ。
天音は、貰って来た大量の白菜で豚バラ肉の重蒸しを作ってくれた。
シンプルだが、出汁が聞いていてすごくおいしい。
「はい! 久しぶりに百合さんにも会えましたし楽しかったですよ」
「なら、明日からも頑張れるな?」
意地悪く聞いてくる。
「もちろん頑張りますよ。貰った給料の分働かないと」
「そういえば、もう使ったのか?」
「半分は使いましたよ。残りの使い道も決めてます」
「何に使ったんだ?」
天音は興味津々と言った感じで聞いてくる。
そんな彼女の前に、緑色の包装しで包んだ掌くらいのサイズの物を置く。
「天音さんにプレゼントです」
その発言に、天音は驚きを見せる。
「私は、自分のために使えって言ったよな?」
少し怒っているような感じもする。
「はい。確かに聞きました」
「なら、なんでこんな発想になったんだ?」
「それは、僕がそうしたかったからです」
「は?」
「自分のために何か買ったって、どうせそのうち忘れてしまう。なら、誰かに感謝を伝えたいって思ったんです。僕がしたかったからしたんです。気遣いとかじゃないです。受け取ってもらえませんか?」
「はぁ」
天音は大きくため息をつくと、呆れたような表情を浮かべて
「分かったよ。受けとるよ。ありがとうな」
すんなりとでは無かったが受け取ってくれた。
そして、すぐに中身を見ようと包み紙を外し始めた。
中から現れたのは、小さな黒色で棒状の物。
棒の片側には赤い球体が付いている。
「かんざしか?」
そうそれは、かんざしだ。
女性が髪をまとめるときに使うもの。
赤い球体の飾りがついているから球かんざしと言われるのかな?
店員さんはそう言っていた気がする。
「天音さんの長い髪いいかなって思ったんです」
「そうか」
短く返事をすると、栗色の髪を留めていたゴムを取る。
ふわーっとなる髪をまとめて、くるくるとまとめる。
まとめた髪にあげたばかりのかんざしを挿し、くるんとする。
そうして、綺麗に髪をまとめると
「どうだ?」
と尋ねてくる。
いつものゴムでまとめた長い髪を揺らす姿も綺麗だと思うが、しっかりとまとめ上げた今の天音は何というか大人っぽい。大人の女性って感じがする。
「すごく似合っています!」
「そうか、なら気が向いたら使うことにするよ」
「はい!」
返事を返すと、彼女は笑顔を浮かべ改めて口を開く。
「大輔 ありがとうな 大事にするよ!」
太陽のようなその笑顔は本当に眩しかった。
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