ほろよい アイスティーサワー ⑤

チーン

「いらっしゃいませ」


 天音の予想通り、客足は段々と増え、店は混む時間も多くなってきた。

だから、僕の作った棚からも商品がどんどん出るはずと、そわそわしながらお客さんの動きを見ていた。きっと、お客さんがたくさん僕の棚に集まるって軽い妄想もしながら。

 でも、みんなスルーしていく。

一度は視線をやるのだが、スルーしてワインやビール、日本酒の方に行ってしまうのだ。

「なんでだ?」

 他の棚は、ただ並んでいるだけ。僕の棚はそれなりに工夫しているはずなのに立ち止まってももらえない。

「なんで……」

 悲しい気持ちになりながらも、レジに来たお客さんたちを相手していく。


「はぁ……」

 お客さんの波が途切れ、気を緩めるとため息がこぼれていた。

結局、僕の棚からは何も売れていない。

他の棚は売れすぎてスカスカなところだってあるのに……

 何がいけなかったんだろうって考えていると

チーン

 またお客さんが来たようだ。

「いらっしゃいませ」

 どうやら、さっき来た若い女性が戻ってきたようだ。

そういえば、あんまり若い人来ないな~ 年寄りばっかり。

まぁ、どうせ僕の棚は素通りでしょ。

いじけながら目で追っていると、女性は僕の棚の前で立ち止まる。

そして、商品を手に取ってくれた。

 そのまま、手に取ったのと同じのを全部かごに入れると、レジに来たのだ。

 女性からかごを受け取って中を確認する。

そこには、『ほろよい アイスティーサワー』がたくさん入っていた。

 会計をしていると、「こんなにたくさんの種類が置いてあるの珍しいですね」って嬉しそうに言っていた。そうして、袋詰めして渡すと、女性は満足そうに帰っていった。

「また来るよ」とも言っていた。

 一人になった僕は思わず独り言を漏らしていた。

「何が違うんだ~!」

 スルーしていく他のお客さんと、買ってくれたお客さんに何か違いがあるんだろうか。


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