ほろよい アイスティーサワー ③

 与えられた仕事には期限が付いた。

明後日まで。

 これからの時期は、卒業や就職、ホワイトデーなどの行事やそれに伴うお別れ会や歓迎会でお客さんが多くなるらしく、それに間に合わせたいからだそうだ。

 言いたいことだけ言って、天音はさっさと母屋に戻っていく。

すぐにまたケタケタとした笑い声が聞こえ始めた。

声が丸聞こえなの分かっているのかな?


 僕はというと、後でやろうと思っていた仕事全部放り投げて、渡された紙を凝視している。紙に穴が開くくらい真剣に。

 一覧には、氷結 ジャックダニエル 赤兎馬 霧島 月桂冠 プレミアムモルツ などと沢山の酒の名前が並んでいる。ついでに、ラムネとかポテトチップス、するめ、サラミなどのお菓子も少々。名前の横にある数字も気にはなるが、まずは商品を選ばないといけないと思い、上から下まで見ていくが———————


はっきり言って何が何だか分かんない! 


 難しい漢字や横文字の羅列でもう既にお手上げだ。

『スクリュードライバー』だとか『レッドブレスト』、『黒龍』はゲームの必殺技みたいだし、『ブルネッロ ディ モンタルチーノ リゼルヴァ マドンナ デル ピアーノ ヴァルディカヴァ』はたぶんワインだけど、どこが名前か分からないし、

『ほげほっぽ』に至っては名前かどうかすら怪しい。

 そんな名前ばかりだから、頭はショート寸前。

それと同時にうちに秘めた中二心が擽られる。

『スクリュードライバー』って叫びたくなるのみんな分かるよね?


 しばらく睨めっこして、気が付いた。こんなことしていても分かりっこないって。

 でも、何か思いついたわけではないから、とりあえず店の中をぐるぐる回ることにした。

 手前の焼酎棚から見ていく。

 こんなにも真剣に棚を見たのは初めてなのではないか?

さっきからこんな商品あったんだって新たな発見をしている。

そういえば、『ほげほっぽ』も店においてあった。

『農家のガソリン』を謳っている。おじさんに注ぐと元気になるのかな?

多分だけど、『黒龍』とかも店にあるのだろう。

もしかしたら、あのクソ長い名前のワインも。

 一時間も経つと。僕に与えられた何も棚を除いた7つの棚を見切った。

そうして、一つの考えが思い浮かんだのだ。


「店に無いものを並べればいいんじゃないか」って結論に。


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