第8話 崩壊直撃す

「大丈夫??しっかり!!」


揺すり動かされて、トモエは目を開けた。

ボーっとする中、記憶を遡る。


トモエは雑貨屋に入ったのだ。


その後、店内の床が突然、斜めになって、今度はまた別の角度で斜めになって、店内を前後左右に滑らされ続けたのだ。


「大丈夫です」


トモエが会話しているのは、雑貨屋の店員さん。


さっきまでの拙い日本語から流暢な日本語を話している。


「日本語、お上手だったんですね」


トモエの言葉に、驚いた様子だった。



同時刻の大阪。


トモエが出発して6日経った。

よほど気落ちしているのか、SNSに一切返事がなく、アマミはどう励まそうかと喫茶店でお皿と睨めっこしながら考えていた。


カウンターに置いたグラスが滑っていく。


右に滑る、左に滑る。

設計上、そんなことは起こりえないはずだが、地震を疑い、留め具の付いた棚に収納した。


徐々にその角度が急になっていく。


アマミ自身もその場に立っていられなくなり、色んな角度に滑り出した。


スマホを取り出して撮影し、アップした。


おそらくこれが崩壊。



幸いなことに喫茶店の家具や家電はほとんどを固定していた。

滑っているのは、アマミ自身と一部の小物だけ。


客は来ていなかった。



あまりの激しさに酔いそうになり、そのまま気を失った。




目を覚ました時、外は真っ暗だった。


強ばった体を起こして、外に出た。


見慣れぬ大きなリュックサックを背負った外人が外に立っていた。


「こんにちは」


外人が流暢な日本語で話しかけてきた。


日本を目指して歩いてきたこと。

そして、突然目の前に、この喫茶店が現れたことを語った。


「ここは日本の大阪のはずやないんか??」


アーサと名乗った外人は詳しくは知らないが、ここが日本なら良いと言う感じだった。

よく見ると、アーサの後ろは地面も空も何もかもが黒かった。


黒いのにも関わらず、アーサのことははっきり見えていた。


近くで他の人の騒ぎ声がしていた。

色んな人が口々に、この得体の知れない空間を騒いでいた。


突如、世界は変わってしまった。


自分達が生きているのか、死んでいるのかすら分からない。

どこにいるのかも何も分からなかった。


情報手段は何もかも使えなかった。


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