第4話 崩壊が起こる世界

崩壊の話は、【人類が下ってきた坂】のあるヨーロッパでは情報規制の対象で、現地メディアは一切取材していない。


もちろん、メディアだけでなく、一般人が話すことも規制されていた。


だからこそ、諸外国は崩壊そのものを知らなかった。


この10年で国旗が変わって焚火のマークが入った国々のことは、まだ日本を始め、諸外国も、本当の理由は知らない。


元々小さな争いの多かった地域だったこともあり、同じマークを入れたことは友好の証なのだろうという認識なのだ。


連日連夜報道されているとは言え、崩壊の原因も崩壊の状況も、ほとんど知られていない。


報道番組では、あちこちの関係者を番組に呼び、崩壊の話を恐れ、坂のあったことを懐かしみ、日本でも起こっているらしい崩壊を他人事のように話す。


すでに崩壊は始まっているのだ。


それでも、その崩壊を崩壊に直面している人しか認識出来ない。


崩壊に直面している人は、逃げ出そうという発想が起きないのだ。


ただただ崩壊が終わるのを恐れ、耐え、待つだけ。


崩壊したその後の自分たちに起こることを予想していても、だ。


一部の若者は、SNSで崩壊中の奇妙な現象を撮影してはいたが、それが【崩壊】とは思ってもいない。


【崩壊】と思って撮影されているわけでもないので、それが【崩壊】なのだと気付く人はいないのだ。



ただふざけているのだろう。


そういう動画なのだろう。



そんな認識だ。


それが今、世界で起きていることだ。



情報規制がされている間も、崩壊はどんどん進んでいた。


10年経って坂のあった王国が公表したのは、地図にある自国の面積の40%減になっていたことが発覚したからだ。


恐怖に駆られた王国が公表するに至ったのだ。

各国も様々な学者が調べ始め、日本でも崩壊が発覚した。


それでも、恐怖を感じている人が少ないのは、情報規制がされていなかったはずの日本でも、崩壊に関する情報がなかったからである。


目立った建築物や山、川、湖は健在だったからである。


そして、深刻に感じていなかったのは、身近な人が崩壊に巻き込まれたということがなかったからだろう。


巻き込まれたとしても、本当に巻き込まれたのかさえ確証が持てなかった、と言うのもある。


それくらい崩壊は曖昧だったのだ。


だが、ジワジワと日本も崩壊に巻き込まれていた。

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