第2話 明かされた事実
崩壊が始めて起きたとされてから、10年。
学者達の見解によれば、日本も、東北から関東にかけて崩壊が始まっているという。
-大阪。
「またこのニュースやってる」
崩壊のニュースは、度々特番が組まれていた。
終わることのない、未知の恐怖として。
しかし、一般市民にとっても役人にとっても、ここ日本ではさほど身近に感じていなかった。
「人類が下ってきた坂、だろ?」
文化圏の違う、ここ日本でもヨーロッパのこの話は、有名だった。
かつて、学校で教えられていた、アウストラロピテクスやクロマンニョン人が実在していたという歴史よりみんな信じていた。
「この博物館って、つい最近まであったんやんね」
「10年前ってことは、まだお前学生だけどな」
誰もいない喫茶店で、
二人の男女が喫茶店にあるテレビを観ながら話している。
「あぁ、行ってみたかったなぁ」
トモエは、小さい頃から人類が下ってきたとされる坂へ憧れを感じていた。
お金を稼いで、最初にお金を使うのはここへ行く旅、だ。
そう小さな頃から心に決めていた。
大学生になり、アルバイトを始め、ようやく旅費が貯まったタイミングで知ったこのニュースだ。
ショックを隠せないのも無理はない。
それを知っていることもあり、このニュースが流れる度に聞かされるこの話も、マサキは、大人しく聞き入れていた。
「崩壊なんて、坂が消えへんかったら信じひんかったし」
「ほんまやな」
「みんなそうじゃない??なんで今の今までそんな大事なこと、王国は隠してきたんよ」
頼んだクリームソーダのアイスクリームは、溶けてソーダと混ざり合ってしまっている。
元々のクリームソーダの色ではなくなった、それはまだ一口も飲まれていない。
カランカラン
喫茶店の入口の扉についたベルが鳴る。
「まだおってくれたんか。ありがとな」
戻ってきたのは、喫茶店の店主。
コーヒーや紅茶と一緒に出すミルクを切らしてしまい、ギラギラ照りつける真夏の太陽の下を、自ら買い出しに行っていたのだ。
白の半袖のカッターシャツに、
黒のエプロン姿で出て行った彼は、暑さもあり、エプロンで額の汗を拭っていた。
「店長、それアウト!」
トモエに言われ、エプロンを大急ぎで外し、
手を洗い、買ってきたミルクを冷蔵庫に入れ、自身に氷の入った水を入れ、一気に飲み干した。
「この暑さどうにかならん??」
ブラインドもカーテンもない喫茶店の小窓からは、陽炎が見える。
一説には、崩壊の原因は温暖化なのではないか、という噂まである。
ここだけの話、温暖化と崩壊は一切関係がない。
温暖化は深刻な問題だが、崩壊はこの話の中だけの話だから。
「暑い、暑いって言わんといてくれる?
喫茶店、涼しくしとるやろ」
店長の言う通り、連日の猛暑を感じさせない店内だ。
店長のこだわりで、エアコンの温度はさほど下げていない。
それでも涼しいのは、店長自らが設計考案したこの特殊な建築のおかげだ。
店長は、この特殊な建築を設計し、自らの店を会社のお金で、モデルハウスと称し、建築。社割を使い、安価で購入。
そして、即退職。
その後、この喫茶店を経営し始めた、変わり者だ。
「わたしもこんな家に住みたいです、店長!」
「2階、空いてるって言うてるやろ」
喫茶店だけでなく、3階建にし、
2階を自らの居住スペース、
3階を賃貸にできるスペースとして、
最初から設計しているのだ。
現在、3階の賃貸のスペースはすでに入居者がおり、
女のいない店長は、トモエに2階で一緒に住むことを勧めている。
「えぇー!!店長、それはなし!」
このやりとりも夏休みに入ってから、何度も繰り広げられている。
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