第4話 実はラッキーだった事実と初戦闘

「いや~それにしても今日和樹さんと出会えたのへラッキーでした。」


宴もたけなわにとなってきたところでフレミーがそう切り出す。


「?どうしたんだよ、急に。」


突然の言葉に聞き返す。


「いやいや、和樹さんが転生をしたその日に私が偶然その場を目にしてびっくりしちゃって真上に落ちちゃってこうすることになるなんて予想してなかったので。これがラッキーだったな~って思わずになんと思うんです?」


なるほどそういうことかと納得し


「確かにこんな幸運なんて滅多にあったもんじゃ…」


そう返したところでふと思い当たる。


「そういえば気絶する前までの俺のスキルって『幸運上昇』だったよな」

「気絶する前までのスキル?スキルは固定だって説明したじゃないですか~。もう忘れちゃったんです?」


和樹のスキル『ルーレット』を知らないフレミーはそこまで記憶力が無かったのかと驚き、どうもまぬけという表現が適切なような表情になってしまっている。


「あー、俺のスキルのこと話してなかったな。さっきの説明からだと結構イレギュラーっぽいものだと思うんだけど…」


 これは言わないと分からないよなと和樹は自分が持つスキルが一度眠り目覚める度にルーレットが現れランダムで決まるものだということを説明する。


「ほへー、そんなスキルもあるんですね~」


と感心した顔をするフレミー。


ころころと表情が変わる奴だ…まぁそんな所に可愛さもあるんだがな。と和んでる和樹だが口が裂けても本人の目の前では絶対に言えないなと思い直し話を続ける。


「それでさっきも言ったが気絶前が『幸運上昇』でな、もしかするとそれがフレミーと俺を引き付けたのかなと思って。」


最初は何が幸運上昇だ気絶して不幸そのものじゃないかと思ったがフレミーが幸運だったんだなと話す。右も左も分からない異世界の説明もして貰えたしそう言っても差し支え無いだろう。


「えへへ~私が幸運だなんて照れますな~。」


と照れながらも


「じゃあ和樹さんのおかげでチームを組んでこうしてられるんですね!感謝ですっ!」

と少し声を弾ませて感謝を伝えてくる。


「そんな感謝だなんて…」

と和樹が感謝をされる照れと恥ずかしさで言葉に詰まっていると


「一回気絶したならスキルも『幸運上昇』ではないんですよね?今は何なんです?」


それだったらと聞いてくる。


「ああ、今のスキルは…」


  ここまで話した所でざっざっと人が土を踏む音が聞こえてきた。


 「あれ?こんなところに人が?」


 と音のする方を向くと二人をずっと監視していた盗賊達の姿があった。

 その数は4人。いずれも薄汚れた毛皮で雑に作られた服装をしている。


 「お楽しみの所悪いな嬢ちゃん方」

 「こんな所にいるとキャラバンを狙ってるような悪ーい大人達に襲われて危険なんだぜ」

 「だからなー優しいおじさん達が教えてやるよぉ」

 「感謝するんだぜ?」


 そう言いながらぎゃははと笑いそれぞれの手に得物を持ち近づいてくる。


 まだ大人とは言えない容姿と安全とは言えない場所で休んでる二人がまさかスキル持ちとは思いもしなかったのだろう。まさかエルフの生き残りとは思いもしていないのだろう。明るければエルフ特有の尖った耳で気づけなくもないのだが生憎今は夜だ。それ故に簡単に捕まえられると判断してしまった哀れな者達。


「ふふん。この私に喧嘩を売るんですか?」


とうけてたつフレミー。その顔には微笑が浮かんでいて妙な怖さと迫力を和樹は感じつつもフレミーのこういう所に頼もしさを覚える。盗賊達は知らないがエルフ族で自称強いやつだし。


そんな中今の俺のスキル《炎弾Ⅰ》のお披露目の機会を逃したな…けどいきなり戦闘ってのもきつそうだからそれはそれで…と安堵している部分もあったりする。


しかし侮ってる盗賊達は怯まず


「調子のんじゃねぇぇぇぇ」


とフレミーに襲いかかる。


それを目の端に収めながら余裕の態度で


「せっかくなので和樹さん、私達エルフ族が持つスキル『自然』を見せちゃいますね。これには4つの効果があります。まずは炎です。」

そう言って手をかざすと燃え盛る炎が迸り1人を呑み込み悲鳴を上げさせる。


「次は水です。」

今度は水が生み出され勢いよく噴出しフレミーの反撃に戸惑いを隠せないでいる1人を押し流す。


3つ目は風で穏やかだった空気の流れが激しくなりやけくそに襲い掛かろうとした3人目を吹き飛ばす。


最後に地面への干渉と言い手を下につくと何もない所から人1人分ほどの太さがある柱が隆起しダメだと悟った4人目も軽々と突き飛ばす。


その圧倒的な戦闘能力に目を丸くしていると


「これがエルフに伝わる森で修行をした成果です!」


ドヤァと胸を張る。 慎ましやかな部分があることもありその姿が子供っぽく可愛らしい。しかしそれだけ言うと


「今日はずっと空を飛び続けてスキルを使ってで疲れちゃいました。」


と座りこんでしまう。 そんなフレミーを見下ろし


「最後のが無ければかっこよかったんだけどなぁ」


 そう和樹は女の子1人に戦わせてしまった恥ずかしさを紛らわすように言う。


「もう、ちゃんと誉めて下さいよ~」


  と襲撃を返り討ちにし、再び気が緩んできた所に


「残念だったなぁぁ。そこの女が終わりじゃ何もできねえだろぉぉ。ざまぁみやがれぇぇ。」


と反対からの逃げ道を塞ぐために待機していた5人目の盗賊がさっきとは逆の方向からナイフを手に襲いかかってくる。だか


「そう上手くいくかよっ。『炎弾』っ。」


と叫びルーレットで当たったスキルを発動しさっきは何も出来なかったことを取り返そうと和樹が立ち向かう。


スキルを使用したことにより虚脱感が生じ、その手からは拳サイズの火の弾が出て来てふわふわと飛んでいく。それはフレミーが出した火力とは大違いで…


「「しょっっぼ」」


あまりのしょぼさに盗賊はともかくフレミーにまでつっこまれた。男は驚愕の表情までも浮かべていて和樹までもスキルを持っているとは夢にも思わなかったようだ。


いや、俺もそう思ったけど言わないでよ。特にフレミー、仲間でしょ?そう思いつつ放たれた炎弾の行方を見守る。するとと男の服に触れ勢いよく服が燃え上がる。


「あっついやっぎゃぁぁぁぁ」


と焼ける苦しさに悶え地面の上を転がり始めた。先程までの調子が嘘のようだ。まぁ、肌が焼かれればそうなるのは当然なのだろうが。


「あ、勝った」

「あ、勝ったじゃないですよぅ。その人死んじゃいますよぅ。殺す必要なんてないんですからね~。」


余裕綽々と敵の心配をするフレミー。


「……………どうしよう?」


当然のことながら和樹も人を殺す覚悟は持ち合わせず思案し、ごろごろと土の上を転げ回る男を見てふと閃いた。


「火の上に土をかけてやれば…!」


すぐさま行動に移しなんとか消火する。


「良かった。無事みたいだ。」


息を確認しそう言い命に別状は無さそうだと安堵する。


「それは良かったです~。流石にこれ以上の襲撃は無さそうですね。」


 白み始めた空の下、てへへと疲れた笑みを浮かべ辺りを確認し続ける


「少し休憩をとりましょう。でないと移動するのがちょっと…」

「そうだな。俺も疲れたよ。念のため交互に寝よう。」

「はい。それが良さそうです。」


 その後また雑談を始めてきたフレミーに少しだけ返答しより疲れているだろうフレミーから眠ることになったのだった。





  二人とも十分に休憩し太陽がてかてかと照らす頃。


「さぁ、元気になりましたし早速向かいましょう!私達二人が最初に向かう街フルクトルへ!」


2人とも休息を十分に摂ったところでフレミーは愛用の移動系マジックアイテム空飛ぶほうきを掲げはつらつとして言う。


そうしてまだ見ぬ街へと想いをはせながらフレミー運転のもとフルクトルへ向かうのであった。


 あ、ほうきに乗る前に頭への衝突を経験してしまった和樹は乗りたくないなどとごねていたのはここだけの秘密ということで。


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