第3話 異世界の実情
「なるほど。それでこの世界のことを私に教えて欲しいと。」
和樹が話し終えると神妙な面持ちで少女は言う。
「そうだ。でないと女神に言われた魔王の討伐とやらもできなくてな…」
「分かりました。そういうことならあなたにこの世界のことを話してあげましょう。転生というのは聞いたことが無いですけどあなたの話を嘘と一蹴することもできないですしね~。私の目で突然現れたのを見たのもありますしひとまずは信じます。」
そう言いこの世界の説明の前に自己紹介をしていませんでしたねと言いフレミーと名乗った少女から説明を受けるのだった。
フレミーによるとこの世界では女神フォルトゥーナの話でもあったように魔王が存在するらしい。だが魔王はずっとこの世界を支配していたのではなく10年ほど前に出てきたらしい。それ以来人間や亜人の街はどんどん数を減らしていき今では2つしかなく、亜人はその身体能力の高さから魔王により目をつけられ手下となるかそれに反抗し壊滅させられたかのどちらかで何とか逃げ果せた者もいるもののその種族事態が割と珍しいものだとのこと。
亜人の話ついでにと
「私はエルフ族の生き残りなんです。こう見えて強いんですよ!」
と決して大きくはない胸を突き出し凄いでしょとばかりに自慢する一面もあったりした。
エルフ属は魔王に壊滅させられた種族の一例だそうだ。ちなみに、魔王軍についたのはゴブリンやガーゴイルなどがいるとのこと。これはまだ一部で他にもいるとのこと。本格的に魔王軍と戦うようになったら顔を合わせることになるかもしれない。
そして俺が授かった『ルーレット』のようなスキルというものは基本的にその強さには個人差があり、基本的には種族固有のものである。例外なのが人間で持つ者と持たない者がいる。多くの人間はスキルを持たず使える人間は少数らしい。しかもスキルを使えたとしてもそれだけで亜人と戦えるレベルのものはほとんどいないという。そんな人間が持つスキルで面白い点が個人で使えるものが違い亜人達のように種族で固有ではないところにある。ある者は火を使い、また別の者は風を操りと多岐にわたる。そのため戦うまでどういうスキルかが分からないというのが人間の最大の強みなのだとか。逆に亜人のスキルは前述した通り種族固有のため対策されやすいのが弱点になる。
だから人間は戦闘時にマジックアイテムを使う者が多い。
マジックアイテムとは名前の通り魔法を使えなくても特殊な素材と血のように赤い色をした特別な石―血石―を組み合わせることでスキルが持つような効果を得た道具のことだ。戦いに使えるものからフレミーが俺の頭に落ちる直前まで乗っていた空飛ぶほうきような移動に使うものまで存在する。その素材の特殊性により数が少ないため高値で取引され入手が困難なのと使うのと脱力感が出てしまい中々扱いが難しいという難点もあるのだが。
このようなスキルを持つ者とマジックアイテムを使う者同士が魔王軍を討伐しようとし結成した集団・ギルドがあるというのは朗報だ。ただスキルを持つものが少なくマジックアイテムを持つ人が少ないためその規模自体はあまり大きくはないのだがあるだけまだましなのは言うまでもない。
「とりあえず説明はこれくらいですかね~」
「うん、ありがとう。助かるよ。………じゃあ、まずはそのギルドとやらに入ってみるのが良いのか?」
「そうですね~。魔王討伐を目指すならまずはそれじゃないですか?情報を集めないことにもどうにもならないですしね~。」
ということでこの世界のことも知れたし
「そうだな。今日は暗くなってきたしここで休んで明日はそこを目指してみるよ。」
と明日の方針を立てていると
「あのそれなんですけど…」
と何か言いずらそうに下に俯きもじもじし始めるフレミー。
「ん、どうした?」
俺の計画に何か問題でもあったのかと不安になり聞き返すと
「実はですね、和樹さん。私と一緒に魔王討伐のためのチームを組んで欲しいんです。散々知ったように色々話しましたけどエルフ族に伝わる森でずっとスキルの修行ばかりで街には出向いたことはなくてですね、他に知っている人がいないんですよね…」
フレミーのあまりにも意外な告白をする。てっきりそういったことに慣れているものと思っていた和樹は目を丸くする。
「魔王討伐ということだったのでチームを組んで欲しいな~という思いで色々話しちゃったところもあるんですけどね。」
フレミーはえへへとちょっと恥ずかしそうにしながらこれまでの親切の理由を明かす。
なるほど、これで合点がいく。見知らぬ俺に色々と話してくれるのはおかしいと思ったんだ。けど、悪意もなくこちらに歩み寄ろうとしてくれてるのだ。断る理由はないだろう。
「そういうことだったのか。こちらとしては望んでもない話だよ。さっきも言ったけどこの世界には来たばかりで右も左も分からなくてな。」
そう少しは微笑をわずかに浮かべて和樹は返す。
「はぁ~、良かったです~。もし断られたらどうしようかと…」
フレミーはそんな見当違いな不安を抱いていたようだ。繰り返すが何せ和樹は文字通りこの世界のことは無知なのだ。断る訳がないではないか。まあ、それはともかく。
「これからよろしくな、フレミー」
「はいっ、こちらこそです!」
和樹は顔に花を咲かせたような笑顔を浮かべたフレミーと共にチームの結成を誓い喜び合うのだった。
そんな夜も更けてきた中
「へへっあいつらこんなところでのんきなもんだぜ」
「そうだな。良いカモだなぁ」
「ひひっ早く襲っちまおうぜ」
「おいおい慌てすぎだろ。もう少しおちつけよ。」
「けど今ならいい感じに気も緩んでるみたいだぜ」
そんな5人の盗賊達の話声がするが彼らの声は和樹とフレミーの2人の耳には届かない。そこには話をしてたら小腹が空いたと肉を焼きだしたフレミーに肉が好きすぎるだろなどと苦笑しつつも楽しげに談笑している2人の姿だけがあった。
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