第4章 僕は、強くなりたい。10
『斬日の伝統芸能とも言えます、斬日式ヒンズースクワット。そのルーツは、日本のプロレスの父と言われる、海道山まで遡るとも言われております。万里の道も一歩から。すべてに基本があるように、斬日本プロレスのベースには、この斬日式ヒンズースクワットがあるわけであります。そのキツさ、エグさでも、他団体を凌ぐとも言われるこのスクワットに、今日で挑むこと26日目の乙幡剛。なんとなんと、ついにその一日の総回数が200回の大台を越えんとしているわけであります!』
赤鬼こと、大鉄さんのトレーニングで徹底的に鍛えられたのが下半身、特に太ももの筋肉だった。斬日式ヒンズースクワットがその代表で、今日まで毎日の筋肉痛にも耐えながら、少しずつその回数を増やしてきた。一セットでこなす回数も、三日前からついに50回になった。
「――さあ、剛! ラスト10回! トレーニングは嘘をつかないぞ! 強くなりたければ、自分をもっと追い込め! さあ、限界を超えろ‼」
必死で両手を振って弾みをつけ、太ももにチカラを込めて立ち上がる。同時に、その回数を大声でカウントする。ただ、それだけのことなのに。回数を重ねるほど、どうしようもなくキツくなる。
「ヨンジューイチ! ヨンジューニ! ヨンジューサン!」
しかし、「トレーニングは嘘をつかない」という大鉄さんの言葉も真実で、最初の頃の自分からは想像もできないトレーニングメニューをこなせるようになりつつあった……。
腕立ても、腹筋も、縄跳びも。最初はつかまることさえできなかったロープ登りだって、今日は1メートル近く登れた。それは僕にとって、大き過ぎる進歩だった。
そして、このクワットでは、ついに200回の壁を越えようとしている――
「――ヨンジューハチ! ヨンジューキュー! ゴージュ!」
やり終えた直後、なぜか笑みが込み上げた。
めちゃくちゃキツくて、吐きそうですらあるのに……。
――これが「達成感」というものなんだろうか。
汗で滲む天井を見上げ、僕はそんなことをぼんやりと考えていた。
『やりました! 乙幡剛‼ 今日も限界を超えました! 昨日の自分を超えましたー‼』
――計画26日目、トレーニング成果
・ヒンズースクワット:200回(50回×4セット)
・プッシュアップ:80回(20回×4セット)
・腹筋:80回(20回×4セット)
・ロープ登り:1メートル登る
・ロードワーク:15キロ(ジョギング)
・縄跳び:500回(100回×5セット)
・ジャンピングスクワット:25回(25回×1セット)
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