世の中では時折、一方的な好意というものを見かけることがある。片方は大量のスキスキ光線を発しており、もう一方は特になんとも思っていないという状態。本作でも同様に、読者共々強力な熱線で焼かれていく。しかしもう一方の主人公は、好意の度が過ぎると同居を解消すると言い出す始末。大変だ、エネルギーが足りなくなってしまう!しかし適度に抑制された熱量で突沸は防がれたのだ。
熱は高い方から低い方へ流れていく。やがてそれは互いに同じ温度となり、熱平衡状態となる。二人の異なる熱量がどのように一致していくのか。互いの視点から、語り明かされていく物語を読み、主人公達と読者の情報量が平衡状態となったとき、一方的な好意は本当に存在したのか明らかになるのだ。