第29話 あなたと触れ合うー②
「むー……」
「どうしたんですか? ゆかさん。世界のかわいい表情大博覧会ですか?」
「そんなの、もし、あるなら行ってみたいけどさあ…。悩んでるの」
その日の食後、まいの部屋にて。いつものリラックスタイム。
私はまいの隣で唸りながら作戦を練っていた。もちろん、今日、由芽さんと話ことについて。信憑性はないけれど、藁にも縋る思い出、考える。攻め、しかし、攻めとは。一体何をすればいいのか。
うーむ。
‥‥しばらく唸って、結論が出ないのであきらめてまいの肩にポスンと頭を乗せた。まいの方が背が高いけど、座高はあんまり変わらない。つまり足が長いのだまいは、スタイルいいなー。
ぼんやりとそう思いながら、細い足にすっと指を伸ばしてみた。まいのふくらはぎから太ももにかけてなぞってみる。まいの足がぴくっと揺れる。
まいはジャージの半ズボンをパジャマ代わりに着ていて、お風呂あがりだから足がほんのりと赤い。クーラー効かせてるから平気だけど、触れている肩や指に、ほんのちょっぴり湿っぽい感覚がある。
太ももまで指が来ると、ナイロンのすべすべした感覚が彼女の太ももに沿って感じられた。
細い……。細いな……。これでも健康的になったほうだけど、それでも細いな。
「ゆかさん、それ捉え方によっては誘ってるよ?」
そうやって足を弄んでいると、まいが軽く笑って、そう言った。うーむ、前はもっと恥ずかしがったり、余裕ない感じだったと思うんだけどなー。今では軽く笑っている。
むー、と唸る。やっぱり、なんか納得いかない。
「誘ってるって言ったら?」
「え」
そのまんま返しです! と由芽さんが脳内でハッスルした。
ムカムカしてきたのでそのまま、困惑しているまいの足をいじり続ける。
両手を使って、わちゃわちゃと揉みしだく。
「え、ちょ、ゆかさん?」
あ。
さすがに、ちょっと余裕なさそう。
顔赤いし、慌ててる。そっか、いつもは自分からやるから余裕あるんだね、今までもそうだったし。
自分でやるから予測できるんだ、相手の反応を見慣れてくれば尚のこと。
つまり。
笑みが溢れる。
一方的に弄ばれるのはさ、やっぱり面白くないよね?
足をもんでいた指を撫でるようなものに変える。
触れているという感覚だけを感じさせるみたいに、あえて触りすぎずになぞる。
「ふえ?! ゆかさん?!」
まいの足が驚きで少し跳ねた。それで足から手が離れる、でも止まってあげない。
足が離れて油断したところに、がばっと抱き着いた。薄手のTシャツ越しにまいの細い身体と下着の感覚が伝わってくる。ので、そのまま頬ずりをする。
わき腹から、胸、肩にかけて、私の頭でぐりぐりといじめるみたいに、触れ続ける。
胸に頭が当たった時、まいの口から、ひゃっと可愛らしい声が漏れた。
思わず頬ずりはそのままに、上目遣いでまいを見上げる。
顔、赤い。
困ったみたいな、恥ずかしがってるみたいな、そんな表情。どうしたらいいか、わかんないって思ってる感じ。
うん、その顔が見たかったの。
思わず浮かぶ笑顔のまま、私は頬ずりを続行する。
胸と脇に私の顔が当たるたび、まいの身体がもじもじと揺れる。
くすぐったいかな? 恥ずかしいかな?
ふふふ。
実験ということで、抱きしめるために回していた手で、まいのわき腹に指を這わせてみる。
さわっと、優しく、時々、わさわさとこそばすみたいに。
「ふ!! ひゃっ!!? ゆかさん!!??」
うんうん、くすぐったいみたい。いいね。
そのまま、わき腹を伝って、お腹の方まで指を這わせる。
お腹を指で押すと程よい弾力。そのままさすっていると、ちょっとしたへこみに指が埋まる。
「んっ」
まいがちょっと声を漏らす。
んー……、あ、おへそか。
納得して、そのまま小さく円を描くみたいに指をおへそのなかで優しく回した。
指が動くたび、抱きしめているまいの身体がもじもじと揺れる。うん、おへそって触ると変な感じするよね。なんというか。お腹の奥の方を触られているような感じ。
あんまりやると、腫れちゃうから、ほどほどに指を離して、つぎの場所へと旅立たせる。
次は胸ーーーーは、通り越して、肩かな。
胸はね。きっとまいがえっちな気分になっちゃうから。
とことこと小さな人が歩くみたいに、指にまいの身体を歩かせる。わき腹を通るときに少し肋骨の感触。脇に触れるとまいの身体がぶるっと揺れる。
ほくそ笑みながら、肩へ。
そして肩へ意識が向いてるうちに、こっそりと背中に回って抱き着く。
後ろから抱きしめるみたいな形になって、回した手でまいの鎖骨をなぞる。
……鎖骨って、なんだか普段見えてるけど、絶対触ることのない部分だから、なんだろ。ちょっとドギマギする。
「ゆかさ……ん、それ、ほんとくすぐったい……」
「んむー……」
くすぐったい、だけかい。まいさんや。さっきから、くすぐったいばっかりだね。
ゆかさんはもうちょっとドギマギした顔が見たいのですよ。
仕方ないので、そのまま手を上にスライドさせて、背後から両手でまいの頬に手を当てる。
「むみっ」
変な声を出したまいの頬をそのまま優しくつかんで横に伸ばす。みょいーんと。
「にゃんです、これ」
そのまま、むみむみと揉む……うーん、これはこれで楽しいけれど、これじゃない。
まいもどっちかっていうと、困惑した感じだし。うーん……。
いい加減、ネタが尽きて私は軽くため息を吐いた。
「攻めるのって難しいね、まい」
「攻め……、どういうご心境で?」
「いや、最近、まいが余裕たっぷりなので。攻勢に転じたいゆかさんなのです」
「は……はあ」
頬を伸ばされたまま、まいはちょっと困ったような声を出す。後ろから抱き着いているから、顔は見えないけれど。
「どうしたら、まいはドギマギするの?」
「充分、ドギマギしてますよ」
「うそ、だっていっつもされてる時、私もっと余裕ないもん」
「それはゆかさんの感度の問題かと」
「ううーーー」
くそう、不公平だ。私だってまいを弄びたいし、私が触ったらまいが余裕ない感じにしたいのに。
うーん、しかしこれ以上は、なんかエロ方面に入っちゃうしなあ。
どうすれば……うーん。
仕方ないので、まいの耳に噛みついた。はむっと。
……まいからの反応はない。うーむ。
「これもダメ?」
耳を噛んだまま、まいに問いかける。はみはみし続けるが、反応はない。うーんていうか耳って変な感じ。柔らかいような、固いような。
よく見ればへこみや溝が一杯あるけれど、一体何のためにあるんだろ。
舌で軽く、そのへこみをなぞってみる。反応はーーーーーー「んっ……」
なんか、今。
押し殺したようなまいの声が響いた。
ん?
もう一度、舌で耳の端をなぞる。
「っあ……」
耳、赤い。
よく見れば、声を抑えるみたいに、まいが口を必死に押さえてる。
んー……。
ふっ、と息を吹きかけた。
「ふひゃ……」
押し殺して、なお、漏れてしまった声。よく感じれば、抱きしめる身体が弱く震えている。
「まい」
耳元で語り掛ける。それだけで、彼女の身体がびくんと震える。
ああ、ここ、弱いんだな。
なんとなく、そう思った。
「どうしたの?」
声をかけながら、耳元で舌をなぞらせる。わざと水音を立てると、それだけで彼女の身体が震えて、抑えた口から荒れた息が漏れ出していく。
「かわいい声出てる」
耳の上部から、ゆっくりと、舌でなぞるみたいに、くぼみの一つ一つまで味わうみたいに。
ちょっとしょっぱいのはきっと、お風呂上がりだから。折角綺麗になったそこを、私の唾液で汚していく。
溝から舌を抜くときにわざと音が立つようにすると、そのたびまいの口から抑えた吐息が漏れていく。
時折、口から息を吹きかける。耐えきれず、彼女の身体が震えていく。
ああ、可愛いな。
私の息一つで、私の声一つで、震えるあなたが、悶えるあなたが、どうしようもなく可愛い。
頭を振って逃げようとしたから、両手で頭を捕まえて逃がさない。
ダメだよ、私から逃げちゃ。
お仕置きに、耳の奥まで舌を挿入した。
ざらりとした、狭い穴に私の舌を流し込んでいく。
じゅくじゅくと舌先で音が鳴るのが私にもわかる。
きっと、今、彼女の頭の中は、この音で埋め尽くされてて。
「あ……やぁ……ゆかさ……」
きっと、今、私のことで頭が一杯になってる。
私の頭の奥が痺れていく。
意図せず熱い息が漏れ始める。
おなかの奥が熱くなる。
あ、なんか、やばい、これ。
まいの身体がビクンと震えてた。
それで我に返って、耳から顔を離した。
離れるときに一際、鳴った水音に、まいの身体がもう一度、震える。
私が両手を頭から離すと、身体から力が抜けていたのか、まいはしなだれかかるみたいに私の胸にもたれ込んできた。
気づけば、お互いかなり息が荒れている。当たり前だけど、まいの顔は真っ赤で、多分……私も真っ赤だ。
なんかーーーやばかったな、今。
思わず自分の唇を押さえた。気づけば、動悸が聞こえるほど心臓が鳴っている、まいが胸に顔をうずめているから、もしかしたら聞こえているかもと思うと、余計動悸が早くなる。
「ま、まい、大丈夫?」
そう問うても、まいは荒れた息を返すばかり。身体を起こす気配もない。
仕方ないので、そのまま胸にまいを抱きかかえた。あまり無下にはできない、今回はどう考えても私が悪いし。
ーーーーーというか、私、今。
ーーーーー自分から。
胸の奥がどことなく震える。
身体の奥が熱くなるのを感じる。
ああ、そっか。
これって。
「ゆかさん、今のはね、ダメだよ」
まいの声がしたと同時に視界が後ろに揺れた。
え?
胸にうずくまっていたまいが、私の身体をそのまま押し倒したのだと、数瞬遅れて理解する。
まいが私に馬乗りになって、見下ろしている。
ライトが逆光になって、暗く見える彼女の表情は、赤くなって、余裕がない。
どこか焦点がぼやけたような、そんな眼をしてる。
あ、まい、これ抑えが効いてない、よね。
私、散々、煽っちゃったし。
ああ、でも。
でも。
今はーーーーーーー。
口が塞がれた。
どことなく、手慣れた口づけ。
舌が私の唇に触れた。
入ってくるのかな。
くる、かな。
唇が触れる。
湿った感じ。
柔らかく、暖かい。
あなたの唇が触れている。
ああ、私、今なら。
きっと。
ーーーーーーーー。
唇が離された。
少しの水音を立てて、まいが体を起こす。
表情は相変わらず赤くて、でもちょっとしんどそう。
今、多分、我慢、したんだね。
触れようとしたのを止めてくれたんだね。
「今日は、これくらいで我慢します」
だよね、そんな感じだった。
馬乗りになったままのまいに声をかける。
「ねえ、まい」
「なんですか?」
ちょっと不機嫌な声。
「ありがと」
私が笑ってそう言うと、まいはちょっと困惑したような顔をして、それから、うんうん唸った後に私の胸にぽすんと頭を預けてきた。
「しかたないです、ゆかさん、そーいう人だから」
「ごめんね」
私が笑うと、優しい手でぽかぽか胸を叩いてきた。ふふ。
「私じゃなかったら絶対襲われてますからね、ゆかさん」
「まいじゃなかったら、あんなことしないよ」
「うー……だとしても! だとしても!! 今日のはダメです!! ほんっとうにぎりっぎりでしたよ?!」
「うん、ごめんね、反省してるから」
「はー……ゆかさん、いくら自分がそうじゃないからって自由にしすぎですよ、もう」
「……………」
「ゆかさん?」
「ねえ、まい」
「はい、なんですか?」
「今度ね、話したいことがあるから、話してもいい?」
「……今じゃダメなんですか?」
「今じゃダメなの、私も色々と整理しなきゃいけないから」
「ふーん」
「いい?」
「仕方ない、聞いてあげましょう、私、ゆかさんほどではないけど、寛大なので」
「ふふ、ありがと」
その日の夜は、どちらが言うでもなく。まいのベッドで一緒に眠りについた。
寝入るまで彼女はずっと、私を抱きしめたまんまで。
子どもがぬいぐるみに抱きつくみたいで、思わず笑顔になる。
答えは多分、もう出せる。
それは今日でも、よかったのかもしれないけれど。
勢いのままっていうのは、ちょっと私が苦手だから。
ゆっくりと落ち着いて、お互いの心を開いていきたいから。
大丈夫、もう、大丈夫。
この気持ちは、消えてなくなったりなんかしない。
確かに、今、私の手の中にある。
だから、大丈夫。
問題。あなたの気持ちを答えなさい。
ペンが答えを刻む音がする。
「ねえ、まい。好きだよ」
そう呟く。
眠るあなたの隣で、ゆっくりと眼を閉じた。
※
今日の幸せポイント:7(一部ネコポイントおよび母性ポイントに変換。実質38)
累計の幸せポイント:99(100到達で答えを出す)
今日のゆかさんのネコポイント:4(100になるとゆかさんがまいのネコになる)
累計のゆかさんのネコポイント:97
今日のゆかさんの母性? ポイント:27(100になるとまいがゆかさんのネコになる)
累計のゆかさんの母性? ポイント:77
あと1ポイント。
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