第22話 私とあなたー③

 まいに手を引かれて、夜の町を抜ける。


 まいも私も手ぶらだ。必要なものは何もない、とのこと。


 夏がもう少しで到来する夜は、涼しくて、湿っていて、でもどこか暖かい風で満ちている。


 しばらく歩いて私たちは近所の公園にたどりついた。


 少し、丘を登ったところにある、町を見下ろせる小さな公園。周りに民家もない閑静な場所。


 夜だから、誰もいない。街灯だけが辺りを照らしている。


 公園の真ん中近くにある街灯に照らされたベンチまで歩くと、まいは私の手を離した。


 「まい?」


 「あれ、先についてないんだ……すいません、ゆかさん。もうしばしお待ちを」


 まいはそういうとスマホを取り出して、何やら連絡を取り始める。私は首を傾げながら、ベンチに腰を下ろした。


 コンクリでできたベンチは夏も近いけど、座ると少し冷たい。


 「んー……あ、もう着くっぽいです。ゆかさん」


 「んー?」


 主語が抜けている会話に首を傾げながら、私は言われるまま、その時を待った。何かが着く、らしい。なんだろね。


 程なくして、小さな灰色の軽自動車が夜道を抜けて、公園の駐車場に止まった。


 なんだろ、と私が思っていると、中から女性が二人、顔を出して歩いてくる。少し背の高い、まいより大きい女性と、もう一人は小柄な女性。


 私達を見つけると、なにやら手を振りながら、こっちに向かって歩いてきた。


 「やーやー、ありがとうございます。おねーさん」


 「はいはい、今度なんかおごりなさいよ」


 「もちろん。ところで、そちらは?」


 「え、私の彼女」


 「え」


 「どうも、宵川です。いつも私のむーさんがお世話になってます」


 「あ、これはこれはご丁寧に……、なんでついてきたんですか?」


 「浮気防止……と、あとなんか面白そうだからって……」


 「お、おう……」


 三人で何やら、やり取りをしているが、どうにも関係がつかめない。いや、うーんなんかあったな、まいの知り合いで彼女が最近できた……。そう、そんな人。


 「あ、ハロワのお姉さん?」


 「いえす、その通りです。ゆかさん」


 「あんた、私のこと、どう伝えてんのよ……」


 散々、噂話を聞いていたが、初めて顔を見る。背の高い方の女性は軽く息を吐くと、私に向かって恭しく頭を下げた。


 「どうも、改めてはじめまして。昼馬っていいます。こいつとは……ま、なんだかんだ仲良くしてる……かな?」


 「なぜ、そこ疑問形」


 「ちょっと私の友情の定義からは偶に外れるのよ、あんた。残念過ぎて」


 「おう、どこら辺が残念なのか言ってみんしゃい」


 「とりあえず、突然、言葉遣い変になるとこじゃない?」


 二人の高身長女子が気楽に会話しているのはなんだか面白い。そういえば、まいが他人と仲良く話してるの初めて見るかも、いっつも会うときは、一対一だったからね、なんだか新鮮というか……あれ、なんだろ、涙腺が……。


 「まい……ちゃんと友達いたんだね……」


 「あれ、ゆかさん何故、子どもが初めて友達連れてきた母親みたいな反応なんですか?」


 「そらあんたがぼっちに見えたからでしょ」


 「おかしい、私はさんざん職場での交友関係の話をしていたはずでは……」


 「まい……ひねくれてるから……なんか、本当に友達いるのか……たまに心配で」


 「本当にお母さんみたいになってんね……」


 私が目頭を抑えて、まいの成長に感動しているころ。


 「あ、ちなみに私は宵川です。昼馬さんことむーさんの彼女してます、以後お見知りおきを!」


 ハロワのお姉さんの彼女さんは、元気よく自己紹介していた。きゃぴきゃぴしていて、なんか由芽さんと同じ匂いがする人だった。元気そうって言うか、底抜けに明るいというか、昼馬さんがどことなくダウナーな雰囲気だから、いい凸凹関係なのかもしれない。身長的にも凸凹だけど。


 そんな話も程々に、ハロワのお姉さんもとい昼馬さんは軽く、まいに指を向ける。


 「まー、それはそれとして、やることさっさとやりましょ。道具は車に積んであるから、あんたも運ぶの手伝いなさい」


 「へいへーい、ゆかさんちょっとそこに座って待っててください」


 「う、うん」


 私以外の三人は楽しげに車まで行くと、何やら道具を取り出して各々、大きな箱を抱えて戻ってきた。それから、三人でやいのやいの言いながら準備をしだしたので、私はそっとベンチからのいて、少しだけ三人を見守る。


 まいが持ってきたものは見たことがある、いつも使ってる黒いエレキギターだ。ただ今は外付けのアンプが刺さってる。


 昼馬さんは何やら電子ピアノめいたものを……携帯できるエレクトーンか、あれ。ペダルみたいなものをいくつか差すと、台の高さを調節しながら、ベンチに腰掛けて音を鳴らしている。


 あれ、これって。もしかして。


 「うわあ、公園でなんてやったことないから、感覚変だ―」


 「はっはっは、とちらないでくださいよ、お姉さん」


 「ま、なんとかするわ。みーちゃん、そっちは大丈夫?」


 「うん、大丈夫!」


 宵川さんは……なんて言うんだろ、金曜ロードショーとかでオープニングにあるやつ。……アコーディオンか。かなり大きめのそれを昼馬さんと同じくベンチに腰掛けながら構えている。彼女がかるく楽器を動かすと、景気よく音がアコーディオンから漏れてくる。


 「つーか、私、お姉さんの彼女さんと合わせたことないんですけど」


 「あー……ほっといていいよ。アドリブの鬼だからね。事前に曲は聞きこんできてるし。ま、初見の曲でも問題なく合わせてくるから」


 「まっかせなさーい。適当にリードしてくれたらいいよ、なんとかするから」


 言葉と同時に指が滑らかに動いて、声と同じ調子の和音がアコーディオンからなる。うわあ、絶対音感ってやつだろうか、私には縁遠いものだ。


 「初見に合わせ……? 天才かよ……」


 「私もたまに嫉妬するわ」


 「ふふ、むーさんに褒められると照れますね」


 「「はあ……」」


 高身長女子二人が軽くため息をついた、私から見れば音楽ができる時点でまいもお姉さんも凄いのだけれど、上には上がいるということなのだろうか。ちょっと異次元の比較に、私は首を傾げながら三人を見ていた。


 三人がそれぞれ音の鳴りを確認して、軽く目配せしあうと、まいがこちらを向く。まい以外の二人はベンチに座って後ろで楽器を構えている。まいはその前、いわゆるセンターの位置に立って、ギターを肩からぶら下げている。


 私はそんな三人を地面に体育座りで座って見つめている。


 途中から、何をするかはなんとなく察しがついてた。


 初めて見る、まいのソロじゃないバンド姿。


 笑顔がほころぶ。


 期待に胸が鳴る。


 喉の奥が熱くなって、目じりがもう少し滲んでいる。


 まいが軽く、弦を鳴らす。


 それが始まりの合図だ。


 「じゃ、始めます。ゆかさんの誕生日ライブ。今日のゲストは―、ハロワのお姉さんこと昼馬さんとー、その彼女さんの宵川さんでーす」


 まいのMCに合わせて、二人が思い思いに楽器を鳴らす。


 ドキドキしてきた。胸の奥が激しく脈打っている、少し痛いくらいなのにどうしてか嫌じゃない。


 「あ、ちなみにむーさんはお姉さんじゃないので、ハロワのお姉さんって呼称は正しくないよ?」


 「ちょっと、みーちゃん。今、言う? それ」


 「え?」

 

 宵川さんは何気ない風に言葉を付け加えた。ん?


 まいが驚きの表情で昼馬さんを振り返る、昼馬さんは苦笑い気味で、私も思わず驚愕の表情でお姉さんを見ていた。


 「むーさんは心は女性で、身体は男性で、好きな相手は女性のお方なのですよ。心理的レズというやつですな」


 私とまいはしばし呆然とした後、じーっと昼馬さんをみた。昼馬さんは苦笑い気味にははと笑っている。


 しばらくして、金縛りから解除されたまいが藪にらみぎみに声を上げる。


 「……ややこしっ! っていうか、そういう重要情報、今さらっと言います?!」


 「訂正できるときに、訂正しとかないとねー」


 「みーちゃん、後で……よかったんじゃね」


 私とまいはいろいろと、受け止めきれなくてしばし呆然としていた。昼馬さんはちょっと困惑気味に宵川さんを見ているけれど、宵川さんは一人でにこにこと笑っている。


 まいは額に手を当てたまま、しばし考えこむポーズをすると、ウームと唸る。


 「ちょっと待ってください、私今、情報処理に必死だから。お姉さんは心はお姉さんだけど、身体お姉さんじゃなかった? でもお姉さんが好き? what……?」


 「はーい、気を取り直すよー」


 「何時でも行けるよーん」


 そんな私たちを置いて、肝心のカミングアウト組は気を取り直したように、楽器を持った。


 まいだけが、若干、しぶしぶといったようにギターを構え直す。


 「くっそう、出鼻くじかれた感ある……」


 「ごめんな、みーちゃんこういう人だから……」


 「でも、緊張とけたっしょ?」


 「まあ、確かに」


 宵川さんが軽く笑ったのに、まいがにやりと笑い返す。うん、確かにいい表情だった、本当にそこまで意図したのかは怪しいとこだと思うけど。



 ふっと音を幻視する。



 映像が切り替わるみたいな。まいの表情が一瞬で真剣なものに切り替わる。


 もう、歌のことしか見えてない。そんな、彼女の真剣な眼。


 ああ。


 胸の奥が震える。吐き出す息が熱くなる。頭の奥が痺れたような感じがする。


 期待が、興奮が、感動が、まだ音が鳴りだす前だって言うのに、身体の奥で大音響で響いている。


 だめ、もう泣きそうになってる。


 「最初の曲は?」


 昼馬さんがそう声をかけた。


 「『震えた指』で」


 まいの低い声に、後ろの二人が楽器の音を返事として鳴らした。


 少し、長く息を吐いた後、まいは大きくピックを振ると、最初の一音を鳴らした。



 夜の公園に一つ、でも確かに音が鳴る。



 音の余韻が空気を、風を、私を震わせている。


 まいが二音目を鳴らして、メロディラインを弾き始めると同時に、後ろの二人が追随するように音を鳴らした。


 かつて、まいの音は独りだった。


 ネットにあげる曲は音声ソフトでたくさんの音を付け加えていたけれど、彼女が私の目の前で歌うときはいつも独りだった。


 ギターの音と、彼女の声、響くのはそれだけだった。


 だけど。


 だけど、今は。


 まいが掻き鳴らすギターの後ろで、昼馬さんのエレクトーンが滑らかに動いていく。


 低めの音とリズムの拍とメロディラインをサポートするみたいな伴奏を一人でこなしている。


 三つの音が同時に鳴って私では想像だにもできない音を鳴らし続けている。


 宵川さんのアコーディオンはベースラインを並行させるエレクトーンとは違って、メロディラインを追従するような形で演奏される。


 軽快に、軽妙に、でも時々驚くほどの淑やかさを織り交ぜながら、踊るみたいに緩急をつけてまいのギターに合わせている。


 そして、二人ともしっかりと音が鳴っているのに、まいのギターを決して邪魔していない。


 すごい、な。


 思わず、ため息が漏れた。


 緊張が抜けるような、感嘆に震えるみたいな、そんなため息。


 時々、まいが二人をちらりと見る。どちらともなく頷き返す。


 まいの顔が、昼馬さんの顔が、宵川さんの顔が。


 それぞれ笑顔を見せる。


 宵川さんは音楽自体を楽しむみたいに、ご機嫌よく踊っているみたいに、軽快に笑う。


 昼馬さんは作品の出来を味わうみたいに、達成感に満足するみたいに、確かに笑う。


 まいは。


 まいは、泣きそうになりながら。


 でも、不思議と嬉しそうにしながら、笑ってた。


 ほんと泣き虫だね、まいは。私も人のこと言えないけれど。


 まいが一際、大きく、弦を鳴らした。


 聞き慣れたはずの『震えた指』が今、高らかに歌われる。


 拙かった部分が、経験を経て確かなものに変わっている、所々、音を書き直したのか、アレンジが入っている。


 じっくりと聞かないとわからないような、些細な違いがいくつも散りばめられてる。


 一つ一つの違いは些細なもの、でも曲全体を通してみれば、それは全く別の曲みたいだった。


 ずっと知っていたような、懐かしさがある。


 なのに初めてその側面を見たような感動がある。


 それはまるで、彼女の変化そのものを、弱く震えていたはずの彼女が、それでも確かに歩いてきた道のりそのものみたいで。


 あなたはここまで辿りついたのだと、その成長をまざまざと見せつけているかのようで。


 ああ。


 ああ。


 ああ。こんなの、ずるいよ、まい。


 辛いけど。


 苦しいけれど。


 指は震えているけれど、喉は枯れてしまうけれど。


 それでも、どこかのあなたに届けと。


 あなたは。


 まいは。


 歌ってるんだよね。歌ってくれてるんだよね。


 ずっと、ずっと、あなたの想いを歌ってくれてるんだよね。


 涙が零れる。


 笑顔が零れる。


 それでもあなたは歌っているんだね。


 それでもどこかの誰かに、今は私に歌ってくれてるんだよね。


 いつかより遥かにたしかに、強く堂々として前を向いて、歌うあなたが。


 前を向くあなたが、そこにいる。


 軽く、口ずさむ、あなたの声に合わせて。


 小さく、小さく。


 まいが一瞬だけ、驚いたような顔をした。


 でもすぐ笑顔になる。私に向けて、笑いかける。


 まいはギターを優しく、抱き留めた。


 『震えた指』を弾き終えた。


 「ゆかさん」


 そう言ってあなたは私に手を差し伸べた。


 私はそのまま 彼女に手をひかれるまま立ち上がる。


 「一緒に歌いましょ?」


 「うん!」


 二人で泣きながら、そう笑った。


 「お次は?」


 「んー、『夢ガタリ』で」


 「っていうか、私達も歌っていい感じかなー?」


 「もちろん」


 「みーちゃん、歌詞覚えてんの?」


 「うん、大体ソラでいけるよ」


 「さっすがあ」


 「じゃ、行きましょっかぁ!!」


 まいがもう一度、ギターを構え直すと二人もそれぞれの楽器で軽く応える。


 それからは歌った。


 二人で? ううん、四人で。


 たくさんの想いを、たくさんの言葉を、たくさんの音に載せて。


 『夢ガタリ』はまいの二番目の歌。夢の歌。


 夢を叶えたい少女の歌。自分が自分らしくなるために、未来の自分になるために、頑張れって自分の背中を押す、そんな歌。明るい曲だから、合唱していもどことなく楽しい気分になる。


 『止め処ない』は怒りの歌。


 自分の周りに対する、なにもかもに向ける怒りの歌。歌詞の最後に、怒りを向ける人たち自身が、自分自身を傷つけてるってことを歌う、なんともまいらしい歌。叫ぶみたいに、四人で歌った。昼馬さんは声出し過ぎてむせてた。


 『迂遠な自殺』は一転してダウナーな歌。


 自分自身を小さく、小さく傷つけて、そんな小さな傷たちが最後にどうしようもなく、取り返しのつかない傷になってしまう歌。でも、本当の曲の終わりに、そんな風にはなりたくないって言葉がひっつくのがまいらしい。どんなに暗い歌でも、どことなく前を向こうとしているのがちらりと見える。暗いだけじゃ、終われない。暗い歌なのに、合唱してるから、あんまり暗くならなくて、歌い終わったらみんなで思わず笑ってしまった。


 『甘い夢』はまたもや一転して、あまあまでポップな曲。


 まい曰く、私に向けたラブソング、とのこと。この曲だけ、キャラ変わりすぎなんだよね。なんかテンション変だし。女の子が1人ベッドで震えて、想い人を想うそんな歌。まいが所々歌詞を変えて、私への愛を叫んでた。宵川さんも所々歌詞をむーさんに変えて叫んでた。私と、昼馬さんは顔を赤くしながら、苦笑い。ほんと、変な曲。ちなみに、私に告白する12月にできた曲だそーな。


 『恋ガタリ』は失恋一発目の曲。


 寂しく、優しい曲。誰かの幸せを独り想う、そんな曲。でも途中で爆破するみたいに、感情が飛び出して、でもやっぱり、やっぱり好き!! って感じの曲に急に変わる。初めて聞いたとき、思わず笑っちゃった。爆発の場面は四人で喉が裏返るくらい、叫んだ。歌い終わったら、また、みんなで大笑い。ちなみに、まいにとっては複雑だけど、まいの出世作だったりします。いやーなにが当たるかわかんないね。


 『それでもサイクル』は失恋ソング二発目。


 少しポップで軽い感じの曲、軽妙で、穏やかで延々と聞いていられるようなそんな曲。でも、歌詞の所々で、振り向いてくれない、あなたという単語がぽろぽろ零れだしていく。切なくて、寂しくて、それでも日常を唄う。そんな曲。もともと、どことなく楽しい感じの曲なのだけれど、伴奏の二人が加わったことで、本当に歩きながらステップを踏みたくなるような、そんな曲になった。うん、楽しい。


 『三月の焦燥』は文字通り三月にできた曲。

 

 私との別れの曲。失恋と想いと、未来への不安と、そんなものを歌いながら、でもね頑張るよって。でもね、それでもね前を向くよってそんな曲。小さな部屋の片隅で、ぐっと小さな勇気を振り絞って部屋の外に出ていく、そんな曲。この曲は確か、感想が上手く伝えられなかった。私との別れがテーマになっていたからかな。今度、ちゃんと伝えてみようかな。まいは歌いながら、私の肩に顔をうずめてた。歌いにくくないのかなあ。思わず笑う。


 『届けない』はいつか部屋で歌ってくれた曲。


 ただ優しくて、ただ寂しくて、それでもあなたを想っているってそんな曲。私と出会っていない間に書いて、私と再会してからネットに上げた曲。メドレーも終わりに近いから、しんみりと優しく。リラックスするみたいに、ちょっと涙ぐみながら、四人で歌った。静かで穏やかな声が、夜の公園に響いてた。


 『私的な暴動』はまいの文句なしトップ曲かつ最新曲。


 誰かが踏みにじった自分の言葉に、その人が大事にしなかった自分自身に、怒って、喚いて、そんなふうには私はならないって、叫ぶそんな曲。メロディが激しくて、まいはこんな歌も作れるんだと新しい発見があった、そんな曲。何より、完成度がとても高い。暗い曲だから再生数あがらないかもといっていたまいの予想とは裏腹に、盛り上がりに盛り上がったそんな曲。


 最後に、「私は私だ」と四人で大声で叫んだ。


 それから、笑う。


 ただただ、笑った。


 ありがとう、まい。


 本当に、最高の誕生日プレゼントだよ。


 まいに泣きながら、笑いながら抱き着いた。


 そしたら、後ろの二人がそれとなく伴奏を始める。


 誕生日の歌。


 はっぴばーすでーとぅーゆー


 はっぴばーすでーでぃあゆかさーん


 はっぴばーすでーとぅーゆー


 そんな声を聴きながら、


 夜の公園に響かせながら。


 私達は笑ってた。


 まいが優しく私の頭を抱いて、耳元でそっと告げた。


 生まれてきてくれて、ありがとうって。


 愛してますって。


 私はじっと彼女に抱かれながら、そっと背中に回した手をぎゅっと近づけた。


 本当に、最高の誕生日だった。


 ああ、私、今、幸せだな。


 そう想った。


 あなたがくれたこの日々が、あなたと出会えたこの日々が。


 本当に幸せだと、そう、想えた。


 ありがとう、まい。そう告げて。


 私は彼女に口づけた。


















 ※



 今日の 幸せポイント:15


 累計の 幸せポイント:79 (100貯まると……?)

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