第一章
第1話 双子の幼馴染
このドキドキとする感覚を味わうのは何度目だろうか。
世界が止まっているかのような静けさを纏いながらそんなことを思う。
出版サイトのトップページを開き一呼吸をしてから“ライトノベル新人大賞結果発表“と書かれた項目にカーソルを当てた。
“貴方は誰の心に惹かれますか? 著者 成瀬 ハル“
でかでかと“大賞“と書かれてある文字の隣には自分の名前と書いた作品名が掲載されていた。
「マジかよ……よっしゃ~~~~~~~~!」
俺は今までの思いをすべてこの一言に込めて吐き出した。
両腕をこれでもかといわんばかりに伸ばし、嬉しいって言葉じゃ到底表すことができないくらいに感極まって立ち上がった。
「やっと。やっと立てたんだ」
沢山の辛かった出来事。止めてしまいたくなるくらいに追い詰められた心。しかし、その思いは無駄じゃなかったんだって証明された。今までの努力は間違っていなかったとハッキリ分かった。遂に俺は長い年月を経て、報われたんだ。
汗水垂らした四年間の苦労と苦痛の日々が蘇ってくる。
何度も諦めたくなった、挫折した、絶望した。
才能のなさにどれだけ胸を刺されたことだろう。
上手くいかない時期の精神はとてつもなく不安定でマイナス思考が限りなく続いていたりもした。
体はやせ細った人のようにボロボロで何をするにも気力が湧かなく、ありたい本当の自分を見失い、さ迷い続けていた。小説家なんてのは夢のまた夢。俺が立ち寄っていい場所じゃないんだって脳裏に焼き付いていた。
けど。
だけど。
信念はボロボロでもやせ細ってもいなかった。
小説家になりたいという思いはけして消えてはいなかった。
だから諦めなかった。
どんなに辛くて苦しくても立ち上がり努力し続けた。
何十時間も原稿用紙と向き合ってきた日々。
小説家という目標に抗い続けた俺の信念が今、実った。
「春おめでとう!今日はお祝いパーティーしないとね!」
「ありがとう花。嬉しすぎて言葉がでない。信じられないよ」
「春の努力の成果だよっ!」
「いい作品がなかっただけでしょ?たまたまよ!たまたまっ!」
「おいやめろ!そんなこと言うな青葉!感動が薄れるだろ!?俺今泣きそうになってたのに一気に冷めたわ」
あとその発言、著者に失礼だからな?
「もうっ青葉ったら酷いこと言わないの!発売したらサインかいてよハル先生っ!」
念願である小説家になった瞬間を目にしたのは俺だけではなかった。
今いる友達の中で一番親しい人。
正論をかましたら、友達が少ないだけなんだが……
名前は 姉の
俺の大事な友達兼、双子の幼馴染だ。
青葉と花とは幼稚園の時からの古い付き合いで家族ぐるみでもよく遊びに行ったりしていた。最近は遊ばなくなったものの、親の事情で妹と二人暮らしの俺たちによくご飯を誘ってくれる。高校も同じということもあり、一緒に登下校することもある。
「けど本当に夢を叶えちゃうなんてね!」
「ここまで来るのに時間かかり過ぎたけどな」
「でもこの瞬間を待ってたんだもんね」
「そーだな」
妹の花は誰にでも優しく、誰とでも話すことができる社交的な女の子。常に笑顔でいるムードメーカー的存在。故に顔が広く、みんなからの信頼が得られている人気者だ。花はサラサラとしたピンクアッシュのロングヘアが特徴だ。
「売れないわよ!あんたの作品なんて!」
「さっきからちょっと言い過ぎじゃない?俺泣くよ?」
「勝手に泣いてればいいでしょ!」
「ホントに容赦なさすぎでは!?」
対して、姉の青葉は花とは全くと言っていいほど性格が違う。
いつもツンツンしているため、あまり人も寄ってこず、人脈は花ほど広くない。
そして男子には人一倍態度が違う。さらに言えば俺に対してはこうしてイチャモンを付けてくる。何故かは未だに分かっていない。青葉はツヤツヤとした金髪のロングヘアが特徴だ。
手短に双子の幼馴染を説明するとこんなところだ。
ほら性格全然違うだろ?
しかし勿論、双子だから同じ部分は沢山ある。
一番は抜群なスタイルを持っていること。
綺麗な肌にクリっとしたまん丸の大きな目、口角が少し上がった小さな唇、すっと通っている鼻筋、そして手で掴めてしまいそうなくらいに小さな顔。文句の付け所が何一つ出てこない完璧な双子だ。
学校でも有名で美少女ツインズや双子の女神様などと異名まで付けられている程だ。告白されたりラブレターをもらったりするところを何回も見たことがある。俺も幼馴染じゃなかったら好きになってるかもしれないなと告白しているところを見るたびに思う。女子の羨ましがるところをすべて身にまとっている人はそういるわけではない。女優さんには興味がないし、テレビなんてほとんど見ないため説得力があると言ったら薄いかもしれないが、少なくとも双子の幼馴染以外でこんなにも完璧な人は白井さん以外見たことがない。そのくらいの魅力を持っているのだ。そんなの人気にならないわけがない。
しかしながら、付き合っている噂は一切流れたことはない。裏では鉄壁の女神とまで言われているのを聞いたことがある。
俺たちの通う学校 “
モデルやらオンスタグラムで有名な人やらとジャンルは様々。
さっきも言った通り俺はあまりテレビを見るわけではない。勿論、オンスタなんていう陽キャだけの使いそうなアプリなんざ入れてもないため、10代の著名人で認知しているのはあまり多くない。
なのにだ。俺でも聞いたことがあるような人が入学してくるのだ。
本当に何故この学校なのかは分からない。有名人が来るほどの魅力を持っている高校とは思えないからこそ不思議で仕方がない。そのおかげで入試倍率が3倍にまで膨れ上がったとか。俺たちが受験した年も倍率が高かった覚えがある。
そんな沢山の著名人がいる中で告白をされ続ける双子の幼馴染がどれだけ偉大なのかが分かる。著名人も美少女ツインズに告白して振られたという噂も流れている。嘸かしイケメンな奴が告白してきているのにもかかわらず断っている双子の幼馴染が凄い。もはや女優顔負けの存在だ。鉄壁の女神って言われるもの納得がいく。まあイケメンな奴ほど性格ブサイクって言うしみんな外れだったのかもしれないが。
「書籍の方は発売前にもらえると思うからその時にあげるよ」
「嬉しいけどいいの貰っちゃって?」
「何冊かきっとくれるだろうから構わないよ」
「ありがとう!楽しみだね青葉!」
「どうせ駄作なんだからいらないわっ!」
「またそんなこといって。本当はラノベ好きなくせに~」
「う、うるさいわねっ!」
「いいよいいよ読まなくても。俺の駄作なんざよ~」
俺はぶっきら棒につぶやいた。
「自分の作品に酷いこと言ってないでパーティーの準備しよっ!」
いま一度言っておくがこの二人は俺の唯一の心友だからな???
つづく
あとがき
初めましての方は初めまして、立花レイです。今回の作品は超激戦をコンセプトにした作品にしようと思っています。(名前の通り) 複雑な関係性とバチバチの戦いラブコメを書いていけたらなと思っています。続きが読みたいと思えるような作品にしていきますので応援の程よろしくお願いします。
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