双子の幼馴染に恋愛相談したら超激戦ラブコメが始まった件について
立花レイ
プロローグ
プロローグ ~俺という男~
俺は自堕落な生活を送っている。
毎日ゲームしてラノベ読んで寝て食ってまたゲームして……
そんなだらしない日々を送り続けている。
別にこの生活が悪いと思っているわけではない。むしろ幸せだと思う。
自分のやりたいこと、したいことを思うがまま気兼ねなくできているんだ。これ以上の有意義な時間はないと俺は思う。
しかし世間的にはどうだろうか?
きっと人生を至極真っ当に生きている人からすれば“不快“とまではいくまいが、寒い目でみてくる人は少なからずいるだろう。“だらしのない生活“だの“見てて恥ずかしい“だのとぬかしたことを言ってくる。
だが一つ言わせてほしい。
自分のために働くのではなく会社のために夜遅くまで残業して働いているような“世界一“時間を無駄にしている人よりはましだ。と
会社に多大な貢献をしたところで何が返ってくるのだろう。お金か?
お金が欲しいってのは一つの理由だ。お金がないと人は喰ってはいけないし、自分の欲しいものだってロクに買うことができない。お金持ちになりたいという人も腐るほどいる。
しかし、だからといって つまらなくて、楽しくなくて、やり甲斐のないことに必死になるのはあまりに酷い人生だ。お金を稼ぐのに楽しくない職業である必要はない。これだと、ただ会社に無心で貢献するだけのつまらないサラリーマンになってしまう。
それじゃあ負けみたいなものだ。
たまにいるよな、給料なしで残業してるバカ。あれはホントのバカだ。
あいつらはサービス残業がカッコいいと思っている。何処にカッコいいという要素が含まれているのか教えてほしいくらいだ。
しかしご生憎、そんなところにカッコよさなど何一つありゃしない。
奴らはカッコいいという言葉の意味をまるで理解していない頭がお花畑のどうしようもない連中なのだ。どんな考え方をすれば『カッコいい』にたどり着くのだろう。まぁそんな人の考える”カッコいい“など知りたくもないが。
だが仮にカッコいいとしよう。しかしそれを誰が見てる?
可愛い女の子か?好きなアイドルか?好きなアニメキャラか? いやいやないない。
そんなことで惚れる女の子なんていないだろ。
そんな微塵も価値を感じない事に時間を割いているのなら自分のことに使ったほうが幾分も有益だ。
俺は自分のしたいこと、なりたい目標に向かって必死に努力したほうが人生は楽しいし、カッコいいと思う。
話を戻すと、世間に俺の生活を公表したら確実にいい評価はされない。
今話した先っぽの部分だけを聞いたら最悪なライフスタイルだろう。
しかし、俺はただニート同然の生活をしているわけではない。
そんな俺にもある瞬間だけ、その一時だけ真剣になるときがある。
それは
小説を書くということ。
毎日毎日、無気力で生産性のない時間を過ごしている俺だが、それは小説を書き始める前のはなしだ。
俺が唯一全力で頑張りたいと思ったこと。
俺が唯一自分を出せる場所。
俺が人生で一番努力し、なりたいと思った職業。
ライトノベル新人大賞
応募作品数 10078作品
ライトノベル最優秀新人賞 成瀬 ハル
俺は念願のライトノベル作家になった。
俺の本名は
俺は16歳という若さでライトノベル作家になった。
といっても、小説を書き始めて4年くらいが経つ。
歴だけは長いのだ。何回もコンテストに応募しては落ちて また書いてを繰り返し、やっとの思いで小説家という目標にたどり着いた。
この舞台にたどり着くにあたって趣味を制限したり、長期期間の休みなんかは小説を書くことだけを考えて他のことは全て捨てて必死に努力してきた。何枚も書いては直し、それでも自分の満足のいく作品にならなかった時には書いた作品を破いたりもした。その度にいつも思うことがある。
“俺には才能がないのか“
どれだけ書いてもどれだけ書き直してもなんで上手くいかないんだ、と。
一日中必死に考え抜いているのになんでなんだ、と。
ただ自分の努力が無駄になっていくのを肌で感じて苛立ちと共に圧倒的な実力の無さを前に打ちのめされ続けた。
そして俺は“小説家“という目標を断ち切ろうとするほどに挫折を覚えた。
しかしある日、迷いかけている俺に希望の道を切り開いてくれた人がいた。
名前は
学校の放課後、図書室でよく小説を書いたりしていた。
家では事情があり、あまり集中して書くことができなかったからだ。
利用していたとはいえ、毎日通っていたわけではない。
しかし、俺が来るときには必ず彼女がいた。
銀髪のショートヘアをし、綺麗な姿勢で本を読んでいるのが特徴だった。図書室に来ているだけあって自然と物静かそうなイメージが付いていた。
ある日のこと。
納得のいく作品が書けなく、イライラしてその原稿を破ったことがあった。その時の俺には周りが見えていなく非常識にも叫んでしまった。その直後にいつも来ている彼女のことを思い出し、咄嗟に顔を向けると驚いている姿が視界全体に映ったことを鮮明に覚えている。我に返った俺は静かに謝罪をし、ゴミ箱に破った原稿を捨ててその場を去った。
俺はそれ以降 図書室に行かなくなった。
もう諦めようとしていた。
自分でも気づいていた、これ以上成長できないってこと。
そして、『俺のくだらない小説のせいでまた誰かに迷惑をかけてしまうのなら止めてしまえ』と言われている気がした。
学校が終わった放課後、毎日のように通っていた図書室には立ち寄らず帰ろうとした時のこと。突然俺を呼ぶ声がした。
「成瀬君。ちょっといいですか?」
声のした方に目を向けると、そこにはいつも放課後 図書室にいた彼女が立っていた。いつも本を読んでいるために俯いた状態でしか見たことなかったけど、クリっとした黄色い目と綺麗な銀髪が繊維の奥まで輝いており、不覚にもドキッとしてしまう。
「話したいことがあるので図書室に来てくれませんか?」
思いもしなかった発言に表情が変わる。お互い顔は知っているだろうが同じクラスでも話したこともないのに急に彼女はそう呟いた。
「それで話って?」
断る理由が思いつかなくついて来てしまった俺にゆっくり語り掛けてくる。
「これを見てください」
そう言って差し出してきたのは溜まりに溜まった怒りと共に過去最大の“挫折“を覚えさせられた俺のネームだった。そしてビリビリに破ったはずの原稿用紙はテープで手直しされていた。
「成瀬君が最後に図書室へ来た時に破って捨てていったネームです」
「どうしてそれを君が……?それに……」
彼女が俺の駄作を持っていることよりも原稿が直っている驚きのほうが勝っていた。俺は誰もが思うよりビリビリに破った。それはもう修正がきかないくらいに。しかし、ネームをめくって読んでみると間違いが出ることなくしっかりと文章が繋がっていた。
そう簡単につなぎ合わせることはできないはずなのに。
どれだけの時間がかかったことか。
「あの時、声上げて悔しがっていたから気になってしまって……」
「それだけでこんなにも時間をかけて?」
「はい」
「そ、そこまでして読んでどうだった?時間の無駄だと思ったでしょ?面白くなさすぎて逆に笑えてくるよね……」
俺は頭に手を当てて苦笑いしながら言った。
そうでもしないと自分の身が持たなかった。
「とても面白かったです」
「そうだよね……って今なんて?」
「だからとても面白かったと」
びっくり仰天。
言われる言葉なんて否定一つしかないと思っていたのにまさかの反応だった。
“面白い“だなんて言われる世界線などこれっぽっちも想像していなかったため聞き返してしまった。
「大体面白くなかったらわざわざ呼んでませんよ」
「じゃ、じゃあどんなところが面白かったわけ?」
「主人公の本当は好きだけどなかなか言い出せなくて無愛想にしてるところとか!そして何よりツンツンしてるヒロインが段々とツンデレに変わっていって最後のシーンの勇気を出してキスするとことか凄くドキドキしました!!」
彼女はプロを見ているかの様に目をキラキラと光らせて感想を伝えてきた。
書籍化したわけでもない俺の作品を楽しそうに語っていた。
俺は誰にも自分の作品を見せたことがない。駄作を見せたところでと思っていた。感想をもらえるのは小説家になった人だけが得ることのできる特権だと思い込んでいた。
しかし運命がこの瞬間を引き寄せてくれた。
そして輝かしい瞳で語り掛けてきた彼女の言葉に不思議と嘘はないと思えてしまった。
「けど、どうしてこんな素敵な作品を破いて捨てたりなんか……」
すると彼女の顔は一変、さっきまで見せていた笑顔とは全くの別物。
悲しそうで悔しい。そんな複雑な表情をしていた。
「俺さ、もう4年間くらい小説を書いててコンテストにも20作品くらい出したことがあるんだ。けどそれは勿論、全部第一次審査落ち。今までは落ちても落ちてもめげずにポジティブ思考で必死に頑張ってきたけど、そんな思考にも限界がきて、今までのつもりに積もった負の感情が一気に出てきた。ただそれだけだよ。けどこうして君に面白いといってもらえて凄くうれしいよ。この作品が俺の最後になろうとしていたから……」
俺の小説人生において感想なんてのは貰えもしないと思っていたが、最後の最後で偶然が重なり見てみたかった風景が見られただけでも感謝しないといけないなと心の中でそう思う。
「最後になんてさせませんっ!私、成瀬君のアシスタントになりますっ!!」
覚悟を決めていた俺には彼女の言葉の意味がまるで理解できなかった。
いや、理解が追い付かなかった。
「な、何急に!?アシスタント!?」
「いいですか!夢を簡単に諦めないでくださいっ!成瀬君の4年間は何だったんですか!?必死に頑張ってきたのに終わってしまっていいんですか!?」
「そ、それは……」
そんなの俺だってセンスがあったなら続けたいと思う。
自分の書いた小説が全国の書店に並ぶということを考えるだけでワクワクして仕方がない。楽しくてやり甲斐のある職業に就くことがどれだけ凄くて幸せなことか。
けど俺には到底不可能だった。どれだけ努力しようと壁は壊せなかった。
計り知れない高く分厚い壁には勝てなかった。
自分の夢を叶えられた人の確率は限りなく低い。そんなことは分かっている。
分かっているけど……
「さっき最後になろうとしていたといいましたよね?それは心のどこかで諦めきれないということです」
「……」
言い返す言葉もなく口篭もってしまう。
「ズボシですね。私のお父さんラノベ出版社の社長なんですけど、よく作家さんのネームを読んでくれと頼まれる時があるんです。成瀬君の作品は作家さんに匹敵するくらいに引かれた作品でした!」
「ちょっ!サラっと凄い事いってない!?ラノベ出版社の社長だなんて」
「まぁそれは置いておいて。まだチャンスはあるんです!いろんな作家さんのネームを読んできた私が言ってるから信用してください!」
「そんなこと言われても俺は……」
「成瀬君の夢を叶えたい!あなたのようなずっと努力してきた人に私は……!」
彼女の必死な思いが胸に刺さった。
この出来事が俺の小説家に“なりたい“と思い書き始めた原点を再び映し出してくれた。
また俺に目標をくれて、そして小説家に“なりたい“という希望をより思い描かせてくれた瞬間だった。
人っていうのは単純だ。
人の言葉に流されて詐欺に遭ったりする。
親しくしていた友達に裏切られたら苛立つ。今までの思い出がなかったことになるくらいに怒りを覚えたりする。
負の感情の沸点は様々だ。
けど悪いことばかりではない。
誰かの些細な言葉で救われたりする。それが大切な人でも見知らぬ人でも。
その言葉で見失っていた自分の意志をまた取り戻すことができる。
どんなに挫折しようとどんなに苦しくてもたった一言で人は救われる。
思い詰まっていた重い感情が魔法のように一気に吹き飛ぶんだ。
俺はその瞬間に出会った。
大事な感情が。
原点が。
夢が。
俺の“希望“が脳内を埋め尽くした。
閉ざされようとしていた扉が壊された。
この四年間、小説家をいう夢に向けて人生をかけて努力してきた。
いついかなる場合でも前を見据えて立ち上がった。
小説家になると言う思いを胸にあらゆる娯楽・邪魔な感情を断ち切り続けた。
辛かった。上手くいかないときにはゲームやラノベで忘れたかった。
人付き合いをしていく上で、感情をむき出しにしたいときだってあった。
だが、一つの行動で夢への思いが少しでも離れて行ってしまうのならそんなものは必要ないと思った。
でも恋という感情には勝てなかった。
恋なんて一度もしたことがない。
好きとは何だろう、恋愛とは何者だろう、そう思っていた。
しかし、この感情が恋だということはすぐに分かった。
だって今までで。
人生でこんなにも胸が熱くなったのは初めてだったから。
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