第4話 サクラコ21歳。
サクラコは21歳。
気が付くと少女とは言えない年齢だ。
商店街の娘たちは20歳くらいまでに結婚するのがほとんど。
成人した女性には商店街の奥さんたちが寄ってたかって見合い話を持ってくる。
サクラコと一緒に学校へ通ってた娘たちはみんな結婚してしまった。
例外はサクラコくらいだ。
奥さんたちは言う。
「サクラコちゃんなら大丈夫」
なんだ、なんだ。
サクラコなら独身でも一人で生きていけるという意味か。
サクラコだって女の子だ。
ステキなダンナさんを夢見たりもする。
でも薬品店は止めたくない。
だから薬品店にムコ入りしてくれる人。
ついでにユウキより背が高くて。
ユウキより顔がいい男性。
そう言うと奥さんたちも同級生も逃げていく。
しまった。
商店街の奥さんたちとはもっと付き合っておくべきだった。
後悔先に立たず。
しかたないのだ。
サクラコはいつも街の外へ薬品採取に行ってた。
夜は調合。
午前は寝てる。
店番は午後からユウキがする。
奥さんたちと付き合う時間が無い。
店番をしてたユウキの方はご近所付き合い良好だ。
ユウキは外面がいい。
サクラコにはヒドイ言い方を平気でするくせに。
奥さんたちにはお世辞を使ってる。
聴いた話では商店街のアイドルらしい。
けっ。
どこがアイドルだ。
ユウキはもう15歳。
サクラコより背が高くなってしまった。
薬草採取をたまに手伝ってくれる。
勉強はいいのと訊くと、
もう今月習う事は全て予習済みだとか言い出す。
イヤミなヤツだ。
調合はサクラコの仕事だ。
これは他の人には任せられない。
ユウキは今日は出かけてる。
だから仕込みをしつつ、店番をするサクラコだ。
何処に行ってるかと言うと。
「やった。やったぜ!
サクラコ。
合格だ。
役所で働くことが決まった」
「本当に。
スゴイじゃない。
お祝いしよ」
そうユウキは役人になる試験を受けた。
役人試験で合格する中に、一般庶民は滅多にいない。
下級貴族とか、裕福な商人辺りが一般的。
息子に専門の家庭教師を付けて勉強させる。
筆記試験の出来は良かったハズ。
ユウキ本人がそう言ってた。
でも筆記試験だけじゃない。
筆記試験で合格点を出してからが問題。
試験者の家族や、普段の行動が調べられる。
犯罪歴があるヤツはモチロン、問題の多い人間は容赦なく落とされる。
「どうも商店街のおばちゃんたちが相当良く言ってくれたらしい。
キミは品行方正で誰からも信頼されてる
なんて試験官が言ってたぜ」
品行方正!
ってどんなの?
「そうだな。
家の仕事を常に手伝い、
引きこもりがちな姉に変わって近所づきあいも欠かさない。
そんなヤツの事かな」
何だよ。
サクラコを悪く言うんなら夕食は別メニューだ。
さっきまでサクラコが仕込んでいたのは薬じゃない。
夕飯だ。
ユウキの好きなハンバーグだ。
お肉100%とかじゃない。
玉ねぎ、小麦粉、卵、牛乳を入れて作る。
ソースは甘めのケチャップ。
昔からユウキはこれが好きなのだ。
準備してたけど今日は別の物にしよう。
「給料もらったらサクラコにもプレゼント送るからな。
何がいいか、考えてくれよ」
気が変わった。
やっぱりハンバーグだ。
「普通就職祝いはサクラコからユウキに送るんだよ」
「無理すんな。
うちの財政はオレが一番分かってんだ」
そうだね。
店の売上金まとめるのも、年に一回税金を納めるのも、
全部ユウキにやってもらってる。
そうだ。
それももう頼めない。
自分で税金の計算しなきゃ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます