age27 / 棘にご注意

ハロウィンが終わり街はすっかりクリスマスモード。駅前も商店街も流行りのブルーやゴールドに彩られて、道行く気分も何となしに上がっていく。

互いのプレゼントを選びに出掛ける俺も例に漏れずに心が踊る。


「あそこに居るの、もしかして……。

 ちょっと声を掛けてきてもいい?」

例のあなたの同僚か。


後ろから忍び寄り耳元で囁く、あなた。

「誰かへのプレゼントならばラッピングしてもらわないとムード半減だよ」

「っっ!……自宅用だから必要ない。

 ていうか声を掛けるな、面倒臭い」

はあぁぁ、その態度は何だ、こらー!


「初めてだから紹介するね」

話には聞いていて、知ってる。

バイトちゃんが想いを告げるべきかお悩み中のその相手。

他人に超厳しい俺様棘々とげとげドS講師。

いや、あの娘、これ本当に大丈夫なの?


◆ ◆ ◆


「塾生が罹患しないよう細心の注意を払ってるくせに、受験前に人混みへ出掛けるなんて珍しいじゃない?」

「アシにされたついでだ」

「それは残念。どうせなら誰かを誘ったキミと出会いたかったな、こっちも二人だし。

 そうだ、時間あるならご飯でもどう?」


ちょっと待て、俺に断りなく話を進めるな!

「向かいの席で殺気立たれちゃ、美味い飯も不味くなる」


初対面なのに……一言一言が腹立つ。

いや、どこかにコイツの良い部分が有るはずだ。と忖度する気も失せるほど、あの娘はこんな奴のどこがいいのかと謎でしかない!!


「じゃ、またね」

目も合わせずひらひら手を振るだけで、しれっと立ち去りやがって、お手本中のお手本だな。

「気に入らないって顔に出てるよ」

「そんな事ないし………」

そして、ふふふと楽しそうに続ける。

「あのね、彼好みの紅茶葉はここに置いて無いから、さっきの絶対プレゼントだよ。

 声かけた時の一瞬のビクつきといい、照れ隠しがバレバレだからあのタイプを茶化すのはなかなか楽しいよね」


あ、そうですか、良かったねー。

俺はいま、アイツ同様あなたにも腹が立ってきたのを知っていただきたい。

この意味、判る?

そういう意地悪さも俺だけのものにしたいのに……ってことですよ!


あ、ヤバい、余りに愛しすぎちゃって精神が病み始めてる、俺!

いけない、いけない、てへ。

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