10話.[甘えさせなさい]

「きっえー!」

「わっ、も、もう……どうしたの?」

「いいじゃない、たまには甘えさせなさいよ」

「言ったと思うけど私は……って、聞いてないよね?」


 わざとまきの前でやるからこそ面白い。

 それにこれはあたしなりのサポートなんだ。

 こうすればまず間違いなくまきがやって来るし、


「しのぶ、きえにべたべた触れすぎだ」


 こういう行為を重ねればまきに対する想いも増すというもの。


「独占していないで少しは甘えさせなさいよ」

「……せめて腕を掴むぐらいにしろ」

「やだ、手を握らせてもらうわ」

「……とにかく抱きしめるのはやめろ」


 あと、意外とちょろいのもいい感じだ。

 まあ、まきにだって助けられてきたわけだから年上としてね。


「そういえば映画のチケットを貰ったのよ、3枚もあったからあんた達にあげるわ」

「あっ、これ最新の映画のやつ!」

「わたしも見たかったやつだ」

「暇なら見てきなさい、それじゃあね」


 高かったなあ……。

 おかげでお小遣いが全て吹き飛んだ。

 実は4枚も買ってあるから妹のさゆみと一緒に行こうと思う。

 同じ劇場ではなくても同じ映画を見た仲間として4人でいられればそれで良かった。

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24作品目 Rinora @rianora_

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