09話.[そういうことを]

「きえとまきが付き合い始めたって」

「ふふ、意外と行動力の塊ね」


 きえは昔から積極的だった。

 誰もやりたがらない委員会に入ったり、嫌な仕事だって自分から進んでやっていた。

 大丈夫? と聞いてみれば必ずと言っていいほど大丈夫、こういうの好きだからと答えてくれるような子で。


「ちぇ、甘えられなくなるじゃない、あの子を抱きしめるの好きなのに」

「きえ本人は?」

「……そんなの口にしても仕方がないでしょ」


 確かにそうか、これは意地悪な質問をぶつけてしまった。

 姉は、しのぶは年上なりに考えて行動したのだろう。


「とにかくおめでたいことよね」

「そうねえ、あいつらちゃんと守るのかねえ」

「大丈夫よ、私が絶対に守らせるわ」


 最初は3人、いまは4人。

 私達はずっと一緒にいるって約束をした。

 誰かが破ったら意地でもまた守ると言わせてみせる。

 相手がきえでも強気に出るつもりだ。


「まきの前でわざと抱きついてやるわ」

「やめてあげなさい」

「いやいや、私には甘えてって言われたからね」


 そういうことを口にしているのはあくまで私達3人にだけ。

 まあ、そう考えたらやはりというかいい気分にしかならなかった。

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