けたたましく鳴る呼び鈴に重い腰を上げ玄関に向かってみれば尋ねてきたのはこの前応対してくれた刑事さん

私は掴みかかるような勢いで問いただす

 「妻は、妻は見つかったのですか?」

 渋い顔をした警官たちは言い淀みながらも要件を伝えてくる

「遠藤さん、今日は奥さんのことで伺ったのではありません

 実はひとつ確認したいことがありまして」

 懐から出した警察手帳に挟まった一枚の写真を見せながら警官は口火を切る

「一週間前から行方がわからないこの田中という男のことを遠藤さんは何か知りませんか?」

「その男は…

 その男は妻の愛人です…

 ちょっと、ちょっと待ってください…

一週間?一週間前って言ったら妻の失踪した日

 その田中も失踪したってことですか!?」

 自分でも感心するほど舌がまわる


「そうなんですよ

 しかも田中の全口座から失踪中に全財産が引き落とされていて…

 奥様の方では何か無くなった物などは?」

 少しの考えた振りをして私は答える

「少々の衣服、貴金属が少しと妻名義の通帳が…」

「そうですか、ご協力ありがとうございます」

 私は深く頭を下げた


 閉まった玄関ドアの前あの警官たちが話しているのがインターフォン越しに聞こえてくる

「こりゃあ駆け落ちで決まりだな」

 その一言を聞き私は歓声を挙げそうになったが何とか堪えた

 だが身体は正直だ

 足取りが軽い

 もう愛用の杖は必要ない

 あの男が妻を食べたことは知っていた

だからあの田中を食べた

それは嫉妬からなのか執着からなのかは分からない

だが体の底から力が湧いてくる

 これはもしかしたらの棚ぼた

名もない種族が相手の力を自分の力に取り込むために殺した相手を食べたというのは間違っていないのかもしれない


このまま若い肉体を食べ続けていけば若々しい身体を手に入れることも可能なのかもしれない…


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