第2話 転生
「産湯を持って来ておくれ! 早く!」
「リズリット、もう少しよ! 頑張って!」
リズリットと呼ばれた赤髪の女性は今日、我が子の出産に臨んだ。初産という事もあり出産は難航し、耐え難い苦痛を伴っている。
心配した近所の知り合い達が総出で手助け訪れ、各々の出来る役目に従事した。
「くっ! はぁ、はぁ・・・・・・」
「頑張りな! 頭が見えて来てるわよ! もう一息! もう一息で我が子に逢えるんだからね!」
「リズリット、頑張って!」
学生時代からの親友が手を握りながら必死に声援を送る。
額に溜まる汗を時折拭きつつ何度も声援を送り続けるその姿はリズリットの勇気を奮い立たせるには充分なほど頼もしかった。
格闘する事数刻。
「おぎゃあああ! おぎゃあああ!」
待望の我が子と対面を果たした。
助産師によって産湯で綺麗に洗われる我が子との対面にリズリットは涙を堪え切れなかった。
「立派な男の子よ!」
「おめでとう、リズリット!」
「ありがとう、クリス」
「産まれたって!?」
部屋の扉が勢いよく開け放たれて奥から一人の男性が顔を出した。
黒い髪に赤い瞳をした美男性。体つきは逞しく鍛え抜かれており、鍛錬に余念がないことが見て取れるが、我が子の出産という人生初の出来事に冷静さを失っている。
「静かにおし! 心配せずとも母子共に元気だよ!」
「そ、そうか! よかっ・・・・・・あ、男の子か? それとも女の子か!?」
「元気な男の子よ。髪は貴方譲り、瞳の色はリズリット譲りよ」
「どれどれ・・・・・・おぉ! 確かに!」
黒髪碧眼の綺麗な顔立ちをした赤ん坊だった。産まれたばかりだから当然なのだが、優しくて愛らしい目つきをしている。
「この優しい目つきは間違いなくリズリット似だな! 髪の色と質感は僕にかな?」
「小さく整った顔立ちもアナタ似よ、フレッド」
「リズリットお疲れ様。無事で何よりだよ」
「えぇ。一時はどうなるかと思ったのだけど、なんとかなって良かったわ」
母子の無事を喜び合う二人。
傍で見守っていた助産師の初老女性が二人に話題を切り出す。
「名前は決まってるのかい?」
「えぇ。男の子ならフォルドにしようって二人で決めていたの」
「そうとも! この子の名前はフォルド・ラズフェルト! フレッド・ラズフェルトとリズリット・ラズフェルトの子だ!」
「フォルド・ラズフェルト。良い名前じゃない!」
「でしょ? フォルド、お母さんですよ〜」
「俺はお父さんだ!」
「スー、スー」
「安心したんだろうね。すっかり寝ているわ。あれだけ大きな産声を上げたんだ、間違いなく将来は大人物になるね」
「フレッドくんとリズリットの子だもの、間違い無いわね」
穏やかな表情で寝息をたてる赤ん坊を前に周りは幸せな雰囲気に包まれた。
☆★☆★☆★
1週間後。
無事に意識が覚醒した。
視界いっぱいに広がる見知らぬ天井に安堵を覚える。
どうやら無事に異世界転生を果たせたようだ。
「ーーー、ーーーーーー〜」
見知らぬ女性が幸せそうに顔を覗き込んできた。転生したばかりからか発する言葉
理解でくなかった。
日本とはまた違った言語文化のようだし、これは慣れるまでひたすら勉強するしかなさそうだ。神様に言わせればこれもまた努力の一環に含まれているのだろう。
☆★☆★☆★
早くも一年が経った。
子供の成長は早いと言うが流石に産まれたばかりでは早々上達は見られなかった。
強いて挙げるなら、泣き声以外にもい声を発せる様になったのと伝え歩きができるようになったことだろう。
産まれてまだ一年だしまだ焦る時ではない。ちなみに転生先で出会った女性と男性は両親で間違いなさそうだ。
俺が何かに挑戦するたび大騒ぎしている。
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