第10話 私の運命の人(エリザヴェート視点)

全話の前書きに記載した設定資料集を公開しました。ノクターンノベルズ版には地図も作って載せました。

URL: https://novel18.syosetu.com/n9336gr/

タイトルには微ネタバレ注意とありますがネタバレになるようなことは記載してないつもりです、もしよかったら見てみてください。


ではエリザヴェート視点の本編どうぞ~!


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明日は1日ぶりの登城です。

先日の帰り際、ケント殿下と初めてのデートのお約束をしました。

明日が楽しみで寝られないかもしれません。


暇を紛らわすため、私は日課の日記に向き合いながら1か月前のことをふと思い出しました。


その日、私は初めてわがままを言いました。今考えるとこれも運命のいたずらだったのでしょう。

「お父様!1か月後の第三皇子殿下のお披露目パーティーに私もつれていってください!お願いします!」


お父様は少し驚いた表情でした。

「エリーはどうしてパーティーに行きたいんだい?」

絶対に聞かれることだと思っていました。私は私の本心をありのままに伝えます。


「なるほど。一度も帝都に行ったことがないから行ってみたいと。そうか、エリーはまだ領地の外にも行ったことがないんだったね。」

「はい、遠出をしたのは領地の端にある温泉地へ行った時くらいです。私はオルフェウス帝国で一番発展している帝都を見てみたいのです」

お父様は少し考えこんだ後、よい答えをくれました。

「わかった。これも経験だ。8歳になれば帝都の学院に通うことになるんだし一度行ってみよう。帝都には私の職務の関係で10日ほど滞在するが、いいね?」

「はい!もちろんです!」


こうして運命の出会いをする帝都へ行くことが決まったのです。


そして1か月後、お母様とお姉様に見送られ、馬車に乗り込みます。

帝都までは馬車で領地の北部まで移動した後、帝国魔導列車に乗っていきます。

列車で1泊し、しばらく走ると帝都が見えてくるそうです。


お父様と私、それに使用人が5人。私たちは辺境伯家専用の列車に乗り、帝都までの旅が始まりました。

「お父様!魔導列車はすごく速いのですね!景色がどんどん後ろに通り過ぎていきます!あっ!あれがアヴァロン山脈ですか!?とっても高いです!!」

私は初めて見る景色にわくわくしながら列車の旅を楽しみました。


翌朝、メイドの一人が私を揺り起こします。

「お嬢様、もうすぐ帝都でございます。身支度をいたしましょう」

寝ぼけた眼で窓の外を見ると一瞬で目が覚めました。

身支度を済ませ、朝食を食べに行きます。

お父様は朝食を済ませ、紅茶を飲みながら書類とにらめっこしていました。


「お父様!おはようございます!あれがライネル湖ですか!?とても美しい湖ですね!」

「おはよう、エリー。そうだね、やはりライネル湖は何度見ても美しい。そして雄大だ。初代皇帝の名を冠するのも納得だね。」


朝の日課にしているホットミルクを飲みながら窓の外を眺めていると、ついに帝都が見えてきました。


帝都はライネル湖から流れ出す大河、ラルフ川の付け根に発展した都市です。

大陸の北寄りにあるため、冬はとても寒く、雪も降るそうです。


また、”水の都”とも呼ばれており、ライネル湖から大小さまざまな水路を街中に張り巡らせています。旧市街は古風な建物と水路が合わさって、美しい景観を生み出しているそうです。


そして私たちの乗る列車が城壁の中へと入りました。

「わあぁ、帝都はとても広いんですね。建物がずっと続いてるような感じがします。」

「そうだね、私も初めて来たときはとても興奮したのを覚えているよ。」

列車はしばらく走ると、帝都駅に到着しました。

私たちは馬車に乗り、帝都のヘリオス家の屋敷へと向かいます。

駅から出て馬車に乗るとき、たくさんの民衆の方々が見物に来ているのは驚きました。

貴族が珍しいのでしょうか。


「第三皇子殿下のお披露目で国中の貴族が帝都に集まるからね。物珍しさに見物に来るのさ。辺境の貴族の顔を見るのなんてそうあることじゃないから。」

馬車でいろいろな話をしていたらすぐに屋敷に着きました。


「じゃあ昼食を取った後、3日後に向けて準備しよう。それまでは自由時間だ。メイドを2人つけるから屋敷を案内してもらいなさい。」

「わかりました!」

ふふ、探検ですね!ワクワクです!


そしてあっという間に3日が過ぎ、ついにパーティー当日になりました。

お気に入りのブルーのドレスで会場のオルフェウス城へと向かいます。

そういえば帝都名物の”皇帝の鶏”の声も聞くことができました!城のあの塔あたりにいるのでしょうか。


雄大な正門をくぐり、会場に着きました。

多くの貴族の方々がすでに会場で談笑されています。

お父様にエスコートされて会場に入ると、皆さんがこちらを向きたくさんの視線が注がれているのが分かりました。


(おお、可愛らしい。ヘリオス辺境伯家の娘か。)

(姉とは違う属性ですね。光と水でしょうか。)


「あの、お父様?なんだか注目されているみたいですが...」

こんなに見られると緊張してしまいます。

「ふふふ、そんなに緊張しなくても大丈夫だよ。エリーがとても可愛いから見惚れてるだけさ」

「お父様!?そんなこと言われたら余計に緊張します!」

笑いあいながら雑談したり、お父様と仲のいい貴族に挨拶したりしていると、音楽が変わりました。


「陛下がもうすぐいらっしゃるようだ。席に着こうか。」

お父様に言われて席に座ります。


少ししてファンファーレが響き渡り、奥の別の扉から皇族の方々が入場していらっしゃいました。

周りの人が一斉に拍手で出迎えます。

私も少し遅れて拍手しました。皇帝陛下がスッと手を挙げると拍手は収まります。

「今日の主役はもう少しで来る。それまでは楽にせよ。」


また少し待つと、皇帝陛下が片手を挙げ話し始めました。

「皆の者静粛に。本日の主役が到着したようだ。」

またファンファーレが響き渡ります。

奥の扉が開き、私と同じくらいの背の男の子が入場してきました。

白銀の髪に赤紫の瞳、腕には白銀の鷲を乗せています。

凛々しいお顔になぜか目が吸い寄せられます。

「あの方が第三皇子のケント殿下だ。白銀の髪は聖属性を持っているからだよ。」

「聖属性ですか!?1000年に1度生まれるという...。」


その後、ケント殿下と皇帝陛下の演説が終わり、殿下のところへあいさつに行くことになりました。

「ケント殿下とは同い年だから学院でも同級生になるだろう。今の内から顔見知りになっておけば友人になれるかもしれない。しっかり挨拶しようね。」

「友人...!はい!わかりました!」

そして遂に私とお父様...ヘリオス辺境伯家の順番が回ってきました。


私はお父様の後ろについていきます。

すぐ目の前にいらっしゃる皇帝陛下はすごく威厳があると思いました。

「皇帝陛下、第三皇子殿下、ヘリオス辺境伯家当主のアルバート=ラ=ヘリオスでございます。この度はまことにお喜び申し上げます。こちらは次女のエリザヴェートでございます。エリザヴェート、お二人にご挨拶を。」

「はい、お父様。皇帝陛下、第三皇子殿下、ヘリオス家次女のエリザヴェート=レ=ヘリオスでございます。第三皇子殿下とは同じ年齢ですので、2年後学院では良き友人に...ひゃっ!?」

ご挨拶の途中、体から魔力があふれてきます。ケント殿下も同じように魔力があふれだしていました。

2つの魔力は混ざり合い、やがて二つに分かれて体へと戻ってきました。


な、なんでしょう、今の現象。殿下も同じようでしたが...え?

ケント殿下のお姿が輝いて見えました。目が合っていると少し恥ずかしくなってきますが、なぜか目を合わせたままでいたいという気持ちがありました。

最初は聖属性を持ったすごい人という印象でしたが、私はもっと深くケント殿下のことを知りたいと思いました。友人よりももっと特別な関係に...。


皇帝陛下がおっしゃったのは、今の現象は魔力の共鳴というそうで、起こった相手は運命の人だということです。

(ケント殿下は私の...運命の人...?)

そのあとケント殿下と二人きりでお話しした時間は今までで一番楽しい時間でした。相性がいいということはこのことでしょうか?

つい、大人になったケント殿下と私が寄り添って歩く姿を想像してしまいました。


そして殿下との婚約が決まりました。

あの想像が現実になってしまうかもしれません。

それになぜかケント殿下とはうまくいくという確信がありました。


でも婚前交渉とは何でしょうか?お父様によるとケント殿下が15歳になったら教えてくれるそうなので、楽しみに待つことにします。


「よし、今日の日記は終わり!」

私は日記を閉じ、ベッドに寝転がります。

そして明日来ていく服を考えながら眠りに落ちました。



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